業務とソーシャルの連係には工夫と開発のしがいがある
鈴木 エンタープライズ向けのシステムインテグレータをやっている立場から考えると、グループウェアやナレッジマネジメントを経て、いまソーシャルメディアが企業の中に入ろうとしているのは、過去の蓄積の分析よりも、いまここにある情報でもってチームとして問題解決しなくてはいけないように、業務の複雑性が変わってきているからではないかと理解しています。
そこでデベロッパーの役割は、ストックした情報を分析して上司にレポートしていたシステムから、いま起きている出来事をイベントとして必要な人に流していって、そこに関係者が関わることで問題解決していく。そうしたシステムデザインを取り入れて、いまの基幹システムにどうやってソーシャル性を組み込んでいくのかを考えるところに、ひとつあるのではないでしょうか。
必要な情報を取り出す技術が、これまでは「分析」だったのが、ソーシャルの時代には「フィルタリング」になります。基幹システムには活用されないたくさんの情報が眠っていて、それは基幹システムの稼働中にも次々に生み出されているので、それをどう取り出していくかがこれからすごく大事になると思います。
及川 企業の中のソーシャルメディアでは、人だけではなくてドキュメントやシステムも、人と同じようにつぶやくことができるようになります。例えば、業務マニュアルが更新されたら、そのドキュメントが更新内容をつぶやく。お客様から発注があれば、発注内容と納期を受発注システムがつぶやく。稟議書が承認されたらワークフローシステムがそれをつぶやく。
データやシステムをどう語らせ、それを誰に届け、どう業務に結びつけていくのか。いままでの業務システムにソーシャルメディアを連係させるところで工夫のしがいがある、面白いところだと思います。
新野 コラボレーション機能は、メールやグループウェアのような独立したソフトウェアから、あらゆる業務アプリケーションに組み込まれていくのではないですかね。その業務用コミュニケーション基盤の座を狙うべく、多くの製品がソーシャルエンタープライズ市場に投入され、競合が始まっているように思います。
僕は夏サミの基調講演をお願いされているので、講演でそういった流れをお話しするつもりです。
デベロッパー個人にも、企業にもチャンス
岩切 ソーシャルメディアへの接点としてタブレットやスマートフォンを使うことも増えてくるだろうと考えていて、夏サミではビジネスにおけるiPadのお話もしていただく予定です。現状では企業にiPadを導入するときにはSIerが阻害要因という話もありますし。
新野 それは僕も取材で聞く話です。多くのSIerがデータのスキーマや画面フォームからシステムを構築するため、タブレットのような新しいデバイスに対してうまく適応できていないと。
鈴木 使う人がどういう情報が見たいのかという視点と、既存のデータの分析やフォーマットの両面からの発想が必要で、そこは大きく考え方を変えなければいけないところですね。
及川 モバイル以外に、開発プロセスについてのトラックも設けていて、デベロッパー自身がソーシャル機能を活用して開発を進めていきましょうという事例も紹介していきます。
鈴木 これからはお客様、そしてオフショアなどと、どのように透明で実態をきちんと共有した上でよいコミュニケーションがとれるかが重要です。そういう持続可能な関係を築くためにソーシャルなつながりを企業が活用するのも大きなポイントだと思います。
岩切 ソーシャルエンタープライズは、デベロッパー一人ひとりにとって飯の種であり、所属している企業にとっても飯の種でもあると、そういう提案が夏サミでできるのではないかと思います。それはいままでのデブサミとは違う、新しいチャンスへの働きかけになりそうです。