期待と実力のギャップに悩んだ時期も
帰国後もDB2ほか、インメモリデータベースのsolidDBやApache Hadoopを用いたInfosphere BigInsightsなどの技術サポートしている。帰国直後はRedbookの執筆をしたということで「箔(はく)がついた」。しかし当初は周囲からの期待と実力のギャップに悩んだこともあったという。
「書籍をまとめあげ、製品としての知識は十分に備わりました。しかし、お客様の複雑な事情や構成を知り尽くしているわけではないので、即答できない問い合わせもありました。期待されているだけに、答えられないのはつらかったです。若いときは自分で抱え込んでしまったかな」(白井さん)
そのうちに人脈を活用し、必要に応じて誰かに頼りながら解決していくすべを身につけていったそうだ。特に渡米時の人脈は今でも頼りになるという。
長年携わっているDB2もかなり進化し、直近ではV10が出た。V10で推奨する特徴や機能について聞くと「V10というより、私としてはpureScaleですね。これはいいですよ!」と白井さんの声に力が入る。
pureScaleとは当初はV9.7のオプションとして登場し、V10でさらに改善を加えて標準機能となったもの。筆者には「スケールアウトのための機能」というイメージだったが、着目すべきは「無停止」を実現するための機能だということらしい。pureScaleはメインフレームで培われた技術を採用しており、長い実績もある。白井さんだけではなく、IBM内でも「これはエポックメイキングだ!」と評判の機能だそうだ。
数々の現場を渡り歩いている白井さんだけに「テクノロジーが価値を生むのは、それが利用される現場だけ。現場で採用されてなんぼ、現場できちんと動いてなんぼです」と、常に現場を大切にしている。そして現場で技術がきちんと動くためには「技術を生み出す場と現場の橋渡しをする技術者が必要」だと考えている。それがまさに白井さんである。
役割を果たすために白井さんが現場で意識し、実践していることが3つある。該当する技術について「正しく理解する」「それを利用することで実現できるハッピーな未来を関係者に納得、共感してもらう」「正しい方法で実装する」。シンプルで当然であるが、白井さんはこれを常に着実にこなすようにしている。きっと現場にいる人の顔を一人ひとり思い浮かべながら誠実に実践しているのだろう。
「優れた製品技術が現場で正しく使われるように、また現場のニーズにあった製品改善がなされるよう、これからも現場に立ち続けていられたらな、と思っています」
■■■ Profile ■■■
白井徹哉 SHIRAI,Tetusya
日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング株式会社
コンサルティングITスペシャリスト
1992年日本IBM入社。
1995年からDB2の技術サポートを担当し、最新技術の紹介や、それらを活用した先進プロジェクトの支援を社内外で幅広く実施。
近年は、高校生を対象としたIBMのプログラム「ヤング天城会議」を自ら企画、立ち上げるなど、次世代の人材育成のための社会貢献活動にも従事。
週末は2児の父として、友人の家族らとともに、本気モードの「たかおに」、全員参加の「だるまさんが転んだ」等の活動を推進するなど、オフも真剣に取り組んでいる。