SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Data Tech 2024

2024年11月21日(木)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

DBプロに会いたい!

InnoDBのプロは寡黙な紳士―木下靖文さん

2011年4月にO'Reilly MySQL Conference Community Awards 2011の「Contributor of the Year」、2012年には日本OSS推進フォーラムの「第7回 日本OSS奨励賞」を受賞。この人こそ、今回の「DBプロ」である木下靖文さんである。黙々とInnoDBの性能改善について取り組み、静かに語る。そんなイメージの木下さんがどのようにここまで来たのか。これまでの軌跡をたどってみよう。

InnoDBに惚れ込んで

木下靖文さん
木下靖文さん

  「第7回 日本OSS奨励賞」の受賞理由について木下さんはこう説明してくれた。

 「2010年末にリリースされたMySQL 5.5(GA)からInnoDB-Plugin がデフォルトの InnoDB になりました。それまでは、性能改善の開発版という形で従来のInnoDBとは別にInnoDB-Pluginとしてソースコードに含まれていて、性能改善はこのInnoDB-Pluginを対象に行われてきました。5.5 になってそれまで議論された性能改善の成果が一気に一般ユーザーも享受するところとなりました。なので、このタイミングで評価を受けたのだと思います」

 デフォルトストレージエンジンの変更はInnoDB以外を使っていたユーザーには性能改善でインパクトがある変化だったそうだ。そして「Contributor of the Year」受賞をうけ、OSS奨励賞にもつながったという。しかし木下さんは「貢献は業務の一環でもあるので、もっとボランティアで活動している人が受賞するべきではないか」と、一時はOSS奨励賞を辞退することも考えていた。それほど謙虚な人だ。

 まずは入社時までさかのぼる。最初は大手SIerでデータベースとは全く無縁のプロジェクトに配属された。2001年に再配属があり、ここからデータベースと接点が生まれた。データベースの知識はゼロだったから、ORACLE MASTERの勉強を通じてデータベースを学ぶこともあったという。当初は技術支援や製品調査などをしていたそうだ。

 カタログから○×表で比較だなんて、もってのほかである。木下さんはきちんとベンチマークで比較する。そのベンチマークですら自作した。木下さんは「TPCのサイトには仕様が公開されています。そこからデータベースに負荷をかけるソフトウェアを開発しました」とさらりと話す。もともと性能に関して熱心だった。ベンチマークのソフトを開発したことも、その経験を自社が手がけるデータベースシステムの性能改善につながると考えたからだ。

 そして世間の関心は徐々にオープンソースに向けられるようになる。木下さんも各種オープンソースデータベースを検証し、将来性を感じ取っていた。

 しかし2005年ごろ、ある商用データベースベンダーの重鎮が「オープンソースデータベースの性能なんて、まだまだだ。10年過ぎても商用に追いつくことなどないだろう」と言い放ったのを記事で見た。これが沈着冷静な木下さんの闘志に火を付けた。心の中で「なにくそ」と思った。

 ただし重鎮の言葉はそう間違ってなかった。実際当時のオープンソースデータベースではあまりいい性能は出せてなかったからだ。そこで木下さんは「なぜ、性能が出せないのか」その答えを探すべく、ソースコードを読みあさるようになる。木下さんは「『どんだけヒマなんだ』と思われそうですよね」と照れながら笑う。

 ターゲットとしたのはMySQLとInnoDB。特にInnoDBにほれこんだ。木下さんはInnoDBを「それまでのデータベースの性能を調べてきた経験から見て、実装がとても理に叶っている。そして、そう感じたということは、開発者と考え方が合っているとも言えるかも知れない」と説明する。そこが気に入ったようだ。なお木下さんから見ると、MySQLはソースコードが暗号化されているかのように複雑でInnoDBとは対照的。「まるで水と油」なのだそうだ。

 木下さんによれば、ソースの読解性については、InnoDBのソースコードはトランザクション処理の実装などRDBMSの内部構造に詳しくないと読めないという。一方、mysqldのソースコードはユーザー側に近いレイヤーなので、記述が難解でも動作を確認しやすく部分的には理解しやすいのではないか、とのこと。

 (女性にたとえたら、言うことは正しいけど言葉が難解な良家のお嬢様と、親しみやすいけど話がよく飛ぶ下町のギャルみたいな感じだろうか……?)

 いずれにしても、木下さんにとってInnoDBは「性に合っていた」。だからこそ、難解なソースコードも読み進めることができた。そして「いじれば必ず性能はよくなる」と確信し、研究を進めた。

次のページ
MySQL探求道

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
DBプロに会いたい!連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/4322 2012/11/07 00:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング