日本のラグビーを取り巻く状況の変化
ラグビーにおけるデータ活用の話に入る前に、まずはここ最近の日本のラグビー状況とラグビー日本代表について触れておく。現在、国内最高レベルの試合は、企業チームが参加している「ジャパンラグビートップリーグ」と呼ばれるリーグ戦だ。トップリーグではプロ契約の選手もいるが、多くは企業に社員として所属しアマチュアとして競技を行っている。トップリーグは現在14チーム(来シーズンからは2チーム増え16チームに)、2012-2013シーズンのベスト4は、サントリーサンゴリアス、東芝ブレイブルーパス、パナソニックワイルドナイツ、神戸製鋼コベルコスティーラーズという4チームだ。トップリーグの下には各地域リーグがあり、トップリーグへの昇格を目指す構図になっている。トップリーグは、9月の初旬に開幕し翌年1月には優勝が決まる。
これに加え、大学ラグビーがある。関東は対抗戦、リーグ戦という2つの1部リーグがあり、関西リーグ、さらに各地域リーグの上位チームが集い、大学日本1を決める「大学選手権」が行われる(大学選手権の仕組みはここ最近毎年のように変化している)。大学はトップリーグよりもある意味人気は高く、早稲田大学と明治大学が闘う早明戦などはいまだ多くの観客を集めている。
そしてもう1つ有名なのが、「花園」の名で親しまれている「全国高等学校ラグビーフットボール大会」だろう。年明けには、これらさまざまな大会の決勝戦などが行われるので、ラグビーの話題を耳にする機会も増える。ちなみに、かつて行われていた大学日本1と社会人日本1が対戦する、1月15日成人の日に行われていた日本選手権は、いまは大きく形が変わってしまった。なので成人式の晴れ着を着た女性が、スタジアムを埋める光景はいまは見られない。
日本代表の目標は2015年に世界ランキングトップ8入り
ラグビーの国内人気のピークは、おそらく1980年代だろう。新日鐵釜石や神戸製鋼がV7を達成したころで、大学ラグビーの人気も最高潮だった。そのころに比べると、競技人口も減少気味で、高校などでは1つの学校でチーム編成できず、複数校による合同チーム参加もある。
とはいえ、日本の競技レベルは確実に上がっている。まあ、それ以上に海外強豪国の実力も向上してはいるけれど。ちなみに、2013年1月時点で日本は世界ランキング15位。ちなみに1位はニュージーランド、2位が南アフリカ、3位オーストラリア、以下フランス、イングランド、アイルランド、サモアと続く。
ところで、2016年夏季オリンピックでは、新たに採用される正式種目として男女の7人制ラグビーが選ばれた。7人制でもほぼルールは15人制と同じ。グラウンドの大きさも同じで、試合時間のみが通常は7分ハーフと短い。15人で守る広さを7人で守るので、時間は短くなるがかなり過酷な競技だ。7人制は身体の大きさよりはスピードが重視される。ならば日本にも勝機はあるということで、いままさに強化中だ。現状は、男子よりも女子のほうがメダルに近い存在かもしれない。
そして、ラグビーの世界大会と言えば、ワールドカップだ。サッカーと同様4年ごとに開催され、次回は2015年イングランド大会。その次の2019年には、日本での開催が決まっている。まずは、次回2015年までに、世界ランキングでトップ8入りが日本代表の当面の目標だ。
とはいえ、その道は厳しい。日本は過去7回開催されているワールドカップすべてに出場しているが、これまでにジンバブエに対する1勝のみ。上位チームには歯が立たないのが現実。ワールドカップ意外のテストマッチ(ラグビーでは国代表同士の試合をこう呼ぶ)では上位チームに勝利したこともあるが、本気度の違うワールドカップではなかなか勝てない。その中で、再来年までに大きくランキングを上げるのは至難の業だろう。
ラグビーは、基本的なチーム実力差を、戦術や戦略だけで覆すことが難しい競技。だから、予想外の大金星なんて試合はほとんどない。なので日本がランキングを上げるには、明らかにいまより実力を上げ強くならなければならない。そのために掲げているのが「世界で1番のフィットネスのチームになること」とプライヤー氏は言う。これは「ジャパンウェイ」と称され、現在の日本代表の進む方向性となっている。この世界で一番のフィットネスは、上位の代表チームのように身体を大きく強くすることではない。80分間の試合時間中、他のチームよりも常に素早く動き続けられる体力を得ることと考えればいいだろう。