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日本企業の進化論-激動の時代に生き残るための選択肢

複雑性を増すグローバル化では、リスクの質が変容する-「3つのリスク」と新たなガバナンス体制

(第9回)

前回は、企業のグローバル化に伴い、金融取引のグローバル化が質を変えて進展する様子を中心に解説しながら、「現地化」「グローバルでの共通ルール」「リスクの増大」と「新たなガバナンス構築」の必要性を解説しました。今回の記事では、質を変え複雑化するグローバル化において、どのようなリスクがあり、そのリスクに対してどのようなガバナンス体制を構築すべきかを解説します。(今までの連載は、こちら)

「複雑性を増すグローバル化」とリスクの変容-今までと違う「気候変動」、「テロ対応」

 グローバル化は、我々が考えていた以上に複雑性を増しながら速度を上げています。この環境変化に伴って発生するリスクを想定し、適切に対応できるガバナンス体制を構築することが、企業経営にとって、当然のようにやらなければならないことになってきています。

 海外市場への参入に関して、一般的に言われてきた主なリスクとしては、以下のようなものがあります。

  1. カントリー・リスク:政治・経済・社会などの環境変化に起因して事業を毀損するリスク
  2. マーケット(市場)・リスク:為替市場、株式市場、金利市場等、資金の調達・運用に関するリスク
  3. 事業リスク:商品・サービスの価格、品質、製造コストが国や地域と整合しないことにより、利益が獲得できないリスク

 ビジネスのグローバル化が大規模に展開されることに伴い、上記の1から3は互いに深く関連するようになっています。また、市場全体がグローバルにリンクしているため、一つの国や地域で起きたことが、他の国や地域に与える影響が、従来よりも大きくなってきているように思われます。

 海外で事業を行うためには、リスクの分析と対応策の検討が必要となりますが、「一般的なリスク分析」を行うのではなく、自社の事業の特徴を十分に理解したうえでの検討が必要です。また、こういった作業は一時的に行うものではなく、日常的にモニタリングすることが必要ではないでしょうか。以下、最近のトレンドと思われるリスクについて見て行きたいと思います。

図1:主たるリスクの内容と、事業への影響 

1.カントリー・リスク

 元々は、政変や海外企業に対する規制等に基づくものが主でした。しかしながら、政情や経済が安定してきた国が増える中、昨今はそれに輪をかけて、以下のようなリスクにも気を配る必要が出てきました。

自然災害

 「グローバル・ウォーミング」が、各地域に与える影響が少しずつ大きくなっています。「温暖化」と表現されていますが、実際には、気象変動が大きくなっていることに伴うリスクを考える必要が出てきました。たとえば、寒冷気候、豪雨やタイフーンなどにより、大きな被害をもたらす危険性はないのか、という点です。

 記憶に新しいところでは、タイにおける洪水です。これにより、製造業企業は工場の操業に対して大きな損害を受けました。

 また、ニューヨークでは、ウォール街が大雨による大きな被害を受けました。こちらは、一部の金融機関が被害を受けましたが、ニューヨーク証券取引所も取引を停止する状況にまで追い込まれました。

 これらを「カントリー・リスク」と一括りに考えて良いのかどうかは、議論の余地があります。しかしながら、「どの国で、どのようなリスクが起こり得るのか」「リスクが顕在化した最悪のケースでは、どのような事態が想定されるのか」については、各地域や国の状況をモニタリングし、常日頃から考えておく必要がありそうです。「いつか来ると思っていたが、今来るとは思わなかった」状況では困るわけです。

テロリズム

 テロリズムで記憶に新しいのは、アフリカで日本企業が襲撃された事件です。このような不幸な事態から、今後の備えとしての教訓は何があるでしょうか?

 一つ目は、トップマネジメントが一堂に会する機会は危険が伴う、ということです。通常、どの企業でも、幹部が地域を移動するときには、飛行機を別にするなど、交通ルートを多様にします。しかし、今回の場合は、そういった想定を超え、さらに大きな危険が起きました。

 二つ目としては、外部からの襲撃よりも内部の犯行がより危険な可能性がある、ということです。これは、情報漏えいに関しても同様のことが言えます。各企業とも、外部からのアタックについては、入念にセキュリティの強化を図っています。しかしながら、社内に悪意を持った人間がいれば、何の役にも立たない、と言えます。

 三つ目として、仮にこのような状況に追い込まれた場合、「企業としてどのような対応をするのか」という方針を立てておく、という点です。人命が第一であることは言うまでもありませんが、テロリズムに対して、そのようには考えない国もあります。身のすくむような事態ではありますが、経営としてはこういった事態への対応を日頃からしっかりと考えておくことが必要だと言えます。

次のページ
「為替変動リスク」や複雑化する原材料費の変動をいかに管理するのか

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この記事の著者

ベイカレント・コンサルティング 小塚 裕史(コヅカ ヒロシ)

株式会社ベイカレント・コンサルティング 執行役員京都大学にて情報工学を修了。野村総合研究所にてシステム開発、新規事業立上げ、ブーズ・アンド・カンパニー、マッキンゼーで、事業戦略、業務改革のコンサルティング業務に従事。2012年に入社し、現職。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/4585 2013/03/18 08:00

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