ビジネス利用が現実味を帯びてきた「OpenStack」
2013年3月12日、秋葉原コンベンションホールにて「OpenStack Day Tokyo 2013」が開催された。このイベントは、近年ますます注目を増す、オープンソースのクラウドインフラ構築・管理ソフトウェア「OpenStack」に関する情報発信や技術交流を目的としたもの。さまざまな技術セッションやソリューション紹介のほか、パネルディスカッションや製品の展示・デモなどが催された。
また本イベントは、経済産業省と総務省による後援も受けている。冒頭の開会挨拶には、経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課長 江口純一氏と、総務省 情報通信国際戦略局 融合戦略企画官 中村裕治氏が登壇し、オープンソースのクラウド技術の普及・発展を、国の政策としても積極的にバックアップしていく方針である旨を紹介した。
また、同じく開会挨拶に登壇した、「OpenStack Day Tokyo 2013」実行委員会 委員長 長谷川章博氏は、「本日のイベントのテーマは、“OpenStack Technology - Business Ready!”。OpenStackは現在、技術者のコミュニティーのみならず、ビジネスにおいても重要な地位を占めつつある」と述べ、OpenStackがクラウドビジネスのエコシステムにおいて、急速に存在感を高めつつあることを強調した。
ベンダーロックインに「NO!」を突きつけよう
基調講演には、2012年9月に発足したOpenStack FoundationのCOOを務めるマーク・コリエール(Mark Collier)氏が登壇し、「The Rising Stack:How & Why OpenStack is Changing IT」と題したプレゼンテーションを行った。冒頭、コリエール氏は「OpenStackはソフトウェアであると同時にコミュニティーである」と述べ、OpenStackのコミュニティーやエコシステムが日に日に拡大していることを強調した。
「現在、OpenStack Foundationには172の企業、8000人以上の個人が参画している。また、世界中に散らばる800人以上の開発者がOpenStackのプロジェクトに関与しており、プロジェクトのテクニカル・リーダーも開発者たち自らが選出している。こうしたオープン性や多様性、自律性の文化がOpenStackの強さの源泉だ」
米Intelや米PayPalなど、多くの大手企業が既にOpenStackを採用し、自社システムのクラウド化を達成しているという。また、こうした企業で形成されるOpenStackのユーザーコミュニティーも、日々成長を続けているという。
同氏は、こうしたコミュニティー活動の一例として、OpenStackの構築・運用ガイド「OpenStack Operation Guide」の執筆プロジェクトを紹介した。このプロジェクトでは、世界中からボランティアの執筆者が一堂に介し、わずか5日間の内に230ページ超の書籍を完成させたという。
「こうした情熱溢れる人々が集まったコミュニティーで一緒に仕事ができることを、とても光栄に思う」(コリエール氏)
また同氏は、さまざまな統計データを挙げながら、OpenStackに対する関心やコミュニティーの規模が急速に拡大していることを示しつつ、同時にOpenStackは単なるソフトウェアやコミュニティー、ベンダーコンソーシアムといったレベルをはるかに超えるものだとも述べる。
「OpenStackは、ほかのクラウドソフトウェアとは異なり、単一のベンダーではなく数多くの開発者や企業によって支えられており、そのプロセスに関与するすべての人々に最大の価値を提供する。つまり、クラウドの『プラットフォーム・エコシステム』を実現する」
同氏は、このプラットフォーム・エコシステムの必須要素として、「テクノロジー・プラットフォーム」「革新的なエコシステム」「グローバル展開」の3つを挙げる。そしてアップルやマイクロソフト、Android、Facebookなどがこれら3つの要素を満たすことでそれぞれの市場でリーダーとなっている事実を挙げるとともに、OpenStackも同じくプラットフォーム・エコシステムの強化を通じてクラウドの世界における存在感を増しつつあることを強調した。
「各分野におけるプラットフォーム・エコシステムは、少数の勝者しか市場で生き残ることができない。3番手ではもはやアウトだ。クラウドに関して言えば、アマゾンが長らくリーダーとして君臨してきたが、OpenStackも今急速に世界中で普及しており、近い将来にアマゾンを追い越すことが期待されている」
最後に同氏は、会場に詰め掛けた参加者に向けて次のようなメッセージを贈った。
「皆さんには、ベンダーロックインに対して『ノー』と、そして自由に対して『イエス』と表明していただきたい。特定の企業のテクノロジーや戦略に縛られるのではなく、オープンなプロジェクトに自ら積極的に関与する方が、皆さんのビジネスに利益をもたらすし、第一その方が絶対に『楽しい』。ぜひ、OpenStackが推し進める革命に参加してほしい」。