日本の家電メーカーは本当にもうダメなのか?
日本の家電メーカーの苦戦が叫ばれて久しい昨今。90年代の後半から2000年にかけ、日本の家電メーカー各社の時価総額はバブルの勢いも相まって10兆円を超えることも珍しくありませんでした。当時の値動きがそもそも異常でもあったと言えるでしょう。
しかしながら2000年代に入ってからは、AppleやGoogleをはじめとする有力企業との間で、その成長ペースの差異が際立つようになりました。日本のハイテク企業の衰退にまつわる直接的・間接的原因や復活の可能性について著された分析や論評は枚挙に暇がありません。家電メーカーの衰退は「技術立国」という言葉になじんできた多くの日本人にとって、やはり重大な関心事であることがうかがえます。
本当のところ、日本のハイテク産業の再起は可能性としてどの程度あるのでしょうか。技術はあるのにマネジメントが弱いと言われ続けるその理由はなんなのでしょうか。最近のハイテク産業に関するトレンドに触れながら見ていきます。
急増する新規事業立ち上げに関するプロジェクト
ベイカレント・コンサルティングでは、これまで複数の国内大手ハイテクメーカーの新規事業立ち上げやターンアラウンドをご支援してきました。逆説的ではありますが、苦戦が続くハイテク産業において、攻めとも言える新規事業に関するプロジェクトはここ数年増加傾向にあります。
なかでも、プロダクトではなく「サービス開発」に関するものが一際目立ってきました。背景には「モノ売り」で儲けることができなくなった現在、収益構造を、モノ依存からサービスへとシフトすることの重要性に対する各企業の強い認識があります。
テーマとしては「交通・運輸」、「教育」、「医療・福祉・安全」、「農業」、「インフラ・エネルギー」に関するものが比較的多いでしょうか。ハイテク企業は少子高齢化や就労人口の減少を踏まえ、多くのマーケットが頭打ちになるなか、比較的将来有望と見られている領域に各社着目していることが見て取れます。
ハイテク企業がこういった領域での新規事業を検討されているということに多少驚かれる方も多いかも知れませんが、彼らが持つ技術をこれらの領域での“アンメットニーズ”に応える形で活用できれば、新たな市場の創出も見えてくるかも知れません。既にその萌芽は出始めていると我々ベイカレント・コンサルティングは考えています。これに関しては拙著「日本製造業の戦略」を参照いただければ幸いです。