顧客とサービス提供者の関係性が変わる時代-サービスデザインが「変化」に対応する手段である理由
(Service Design Network Japan Conference 2013 レポート:後編)
5月11日、日本で初の開催となったサービスデザインネットワーク・ジャパン・カンファレンス2013。前編では、政府の取り組みや被災地支援でも活用され始めたサービスデザインについてまとめた。後編では、企業での取り組みや今後のサービスデザインの展望について、講演がなされた。
「ユーザーの期待」と「体験」の“ギャップ”を埋める「モノ」と「コト」を含めたデザイン
まずは、ソニー株式会社ソニークリエイティブセンターのマシュー・フォレスト氏より、「こんなコトを待っていた!-製造業における、お客様の期待の醸成とは?」というタイトルで行われた事例報告を紹介する。

ソニータブレットの「使い出しの体験=開封体験(out of box experience)」をミッションに、ユーザーセンタード・デザイン(ユーザー中心設計、以下UCD)を実践しているマシュー氏。今後、ものづくり企業が、どうプロダクトデザインを取り入れていくのかについて講演した。
「ユーザーがどのように商品の箱を開けるのかを観察・分析し、作り手の考える理想と実際の差に注目した」と語るマシュー氏は、ユーザーインタビューを行い箱のデザインのプロトタイプを実施した。
ソニータブレットは、UCDにのっとって、それまで開発されていた。インタビューの結果、75%の人がセットアップに対してまったく問題ないと回答したが、マニュアルが最低限であることへの問い合わせや、想定された以上の変化が生活に起きなかったなど、作り手の意図したとおりのユーザー体験が提供できていないことが判明した。

そのような状況に対して、サービスデザインの手法である「カスタマージャーニーマップ」を作成したマシュー氏。「ユーザーの期待」と「体験」の“ギャップ”を埋める研究を始めた。
「一番の“コアUX(ユーザー体験)”は何かを考え、それをビデオで紹介し、期待をコントロールした。それは、それまでの広告製作アプローチとは違ったものだった」
コアUXから外れた人に対して、どうリカバリーするか。そのためのパターンを考え、それぞれのタッチポイントを洗い出し、体験を可視化し、そこに適切なUXデザインをもとにしたアプローチを導き出した結果、売上やユーザー満足度は向上したという。
「今後の課題は、“見えづらいサービスデザインの効果を図る手段”を、どう数値化していくかだ」
ものづくり企業にとって、付加価値こそがサービスデザインであると語るマシュー氏は、企業にとってはサービスすべてがプロダクトであり、“モノ”と“コト”を含めたトータルのデザインを行うことの重要性を語った。
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江口 晋太朗(エグチ シンタロウ)
TOKYObeta。編集者。これからの未来のための情報設計や環境デザインを実践する編集者。スタートアップやテクノロジー、デザインやカルチャーの分野のコンセプトワークやメディアづくり、企画設計などで企業の事業支援を行う。Twitter@eshintaro
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