最大規模のテクノロジー・サミット
InnovateはIBMの年次イベントの中でも、ソフトウェア開発者やテクノロジーリーダーにフォーカスしたものだ。IBM Rationalのテクノロジーを中心に、ソフトウェア開発によるイノベーションとビジネス変革がテーマである。
今年のキーメッセージは、「Stay ahead」で「常に”先を行く”チームであれ」というもの。ソフトウェア開発の生産性、効率性を高めビジネスの価値を高めることを目的に、470を超えるセッションとワークショップ、170のユーザー企業の事例、93のビジネス・パートナーによる講演がおこなわれ、参加者は4000名となり、開発イベントとしては世界最大級となる。
今年の特長としては、DevOps、アジャイルに関するセッションが多いことである。特に日本でもこのところ注目されているDevOpsについては、IBMの理念や原則、方法論を反映させたメッセージが強調されている。先ごろIBMが買収したUrbancode社の内容に関する発表や、「リーン・スタートアップ」で著名なエリック・リースもセッションに加わるなど熱い議論が展開されている。
初日のキーノートは、各分野のIBMキーマンによるライトニングトーク。モバイル、スマーター・プラネット、DevOps、アジャイルなどについてのIBMとしてのコンセプトが語られた。初日は、コンファレンスの中心人物であり、ジェネラル・マネージャーのクリストフ・クロックナー氏の進行によるライトニングトーク形式のキーノートが行われた。以下は初日キーノートの概要である。
モバイル、クラウド、ソーシャル、ビッグデータ時代のソフトウェア開発
DevOpsとエンジニアの協調
「モバイル、クラウド、ソーシャル、ビッグデータという4つのトレンドが破壊的なイノベーションを生み出す。そしてこの状況は、エンジニアにとっては最大の好機である。
DevOpsでは、新たなITのライフサイクルが生まれる。開発、テスト、デリバリー、デプロイ、オペレーションに関わる人間すべてがステークホルダーとなる。運用に関わるシステムエンジニア、開発に関わるソフトウエアエンジニアが、原則、ルール、環境を共有することで、継続的なリリースと最適化を実現し、オーバーヘッドを省き、より効率的で生産性の高い開発スタイルが生まれるだろう。」(Kristof Kloeckner)
モバイルファーストの時代
「モバイルが日常の行動をリ・インベント(再発明)する。ソフトウェア開発はモバイル・ファーストの時代だ。センサーや車、輸送機器などのモノのインターネット(Internet Of Things)から生み出されるデータ、ソーシャル上での言葉や行動情報などの連携と分析による、クラウドベースのサービス開発の可能性が今後ますます広がる。こうしたインタラクションを可能にしているのがモバイルであり、重要なのはそれら一連の情報をコンテキストとしてとらえることだ。」(Jerry Cuomo)
クラウドによる開発環境の進化
「ソフトウェアのデプロイ環境などのクラウド化によって、スケールの拡張性、伸縮性がますます高まる。ソフトウェア環境、運用環境がクラウド化され、様々なリソースやツールが自在に利用される“APIエコノミー”が生まれている。Blue Mixとは、オープン・アーキテクチャのクラウド環境によるアプリケーション開発のためのツールやフレームワークの総称である」(Bret Greenstein)
ビッグデータは次世代の天然資源
「ソフトウェアのリリースのフィードバックは、ソーシャル、デバイスのログなどで迅速かつ継続的におこなわれる。ビッグデータ分析による知見は、ソフトウェア開発にも大きな変化を及ぼす。ビッグデータは次代の天然資源となる。」(Anjul Bhambhri)
アジャイルとリーンスタートアップ
「ソフトウェアの開発とデリバリー、出荷のスケジュールが計画段階の予測の不確実性や遅延により常に変更を迫られる。ユーザーの満足度、品質とコスト、これらの最適化を図る方法論を追求してきた。リーン・スタートアップの考え方にあるMVP(Minimum Viable Product)は、早期での顧客の満足度、要求を知り、計画の不確実性を低減させる上で有効だ。」(Walker Royce)
継続的なデリバリーの実現ソリューションに注目
3日間の各セッションで強調されたのは、「継続的なデリバリ」「デプロイ、リリースの迅速化」「ステークホルダー協調の開発」といったコンセプトである。2日目のキーノートは、このテーマの象徴的人物として、「リーン・スタートアップ」で著名なエリック・リース氏。そしてイノベーションというテーマに関連して、スティーブ・ウォズニアック氏が登壇し会場を沸かせた。また、展示会場では、先ごろIBMが買収したDevOpsの重要製品Urbancodeの展示に注目が集まっていた。次回記事で紹介する。