ユーザーの動向を通じて、“社会の見える化”を図るビックデータ解析
今回、Yahoo!みんなの政治は検索された情報をもとに、参議院選挙のビックデータ事前予測を実施した。昨年12月に行われた衆議院選挙で初めてビックデータによる選挙予想を行ない、そこからYahoo!検索データにおけるネット上の動きと、実際の得票数の間に高い相関があることが判明し、7月の参議院選挙でも議席予測を実施した。
今回の予測はYahoo!検索のデータを使用し、各政党の得票への繋がりやすさを補正したうえで、特定期間における検索量から得票数を推定する「相関モデル」と、過去の選挙事例をもとに、公示日前後における検索量の変化を増加率としてスコア化し、今回の公示日の検索数を用いて得票数の推定を行う「投影モデル」の2つを用いた。この2つのモデルから推定された得票数をもとに、それぞれの議席数を試算した。その結果、与野党の議席数内訳については、予測と実際の選挙結果が完全に一致。個別政党の内訳でも約9割の的中率となった。
「2013年になってからこれまでに、検索キーワードやTwitterでの言及数などを活用したビックデータレポートを公開している。選挙のみならず、これまで『インフルエンザ』や『景気動向』、『東日本大震災』などのデータレポートを発表している。検索したワードと世の中の事象を結びつけ、実際の状況を“見える化”していくことが目的」
今後も、社会現象を紐解くきっかけとして、あらゆる社会動向を解析していくという。検索などを中心にユーザーのさまざまな情報をもとに社会の一つの形を示すものであり、レポートとして発表することによって、ユーザー自身の日々の行動によって生まれる情報を社会に対して還元し、そのデータをもとに議論や考えを持ってもらいたいと語る。
「基本にあるのは、データによって自社やユーザーの課題解決を図っていくこと。データを見せることで、新しいストーリーを導き出すきっかけづくりになれば」
ネット事業者全体が、選挙によって協働し始めた
今回のネット選挙解禁を受け、ヤフーを含めグリーやサイバーエージェント、Twitter Japan、ドワンゴ、Ustream Asia、LINEの7つのネット事業者がサービスを連携してよりスムーズな情報収集の機会を提供し、有権者に対して有益な政治の情報を届けようと共同企画を実施した。ネット事業者同士が始めて大規模な協働姿勢を示したのは、今回の選挙で見せた大きな形の一つともいえる。
今回の選挙をきっかけに、今後ますます政治の世界において、インターネットの活用が求められる。インターネットというテクノロジーはただのツールではなく、そのツールをどのように使うかを考えなければいけない。ネット事業者にとっても、インターネットを使い社会をより良い方向に進めていきたいという大きな目的は合致している。今回の共同企画をきっかけに、事業者を含めたインターネットの分野全体がより社会や政治と密接に結びつくことで、大きなパラダイムシフトが起きる可能性は次第に大きくなってくるだろう。
情報技術で人々や社会の課題を解決する手段を提供していく
政治は問題解決の一つの手段でしかない。情報技術で人々や社会の課題を解決するという「課題解決エンジン」をヤフーはミッションに掲げ、テクノロジーを使い人々の課題解決の手段の提供を日々行っている。
「自分の身近な問題を調べて解決する方法として、気づいたら「Yahoo!みんなの政治」にたどり着くという状況が理想だ。ユーザーの課題解決の延長線上として政治がある。そのための橋渡しを行い続けたい」
見据えるのは国政だけではない。現在は国会議員を中心に取り扱っているが、今後は地方政治や自治体などの情報も集めていきたいと語る。「地方政治の見える化」を図ることで、ユーザーにとっても身近な問題への意識を向け、その地域に住む人々が何かしら地域とか関われるような情報の提供を模索している。身近な生活に影響を与える地方こそ、まだまだ情報が行き届いていない箇所だ。地域の情報を可視化し、問題を共有することで、課題解決を加速する環境ができてくる。
参院選以降からは、“ネット選挙”はもはや当たり前のものとして認識し、そこからさらに“ネット政治”へと発想を拡大し、選挙期間以外にどう動いていくか。ネット事業者全体としても、政治という大きな分野への進出によって、ユーザーである有権者の行動や情報収集を支援し、有権者自らが社会を作っていくツールを提供していくことが求められてくる。民間企業としての動き、そして私たち有権者個人の行動によって、政治も含めた社会の大きな転換の鍵を握っているといえるだろう。