仮想化環境を効率的に守る方法も登場している
このように変化が激しいIT利用環境に対し、できるだけ網羅的に対策ツールを提供するのがカスペルスキーのようなベンダーの役割でありビジネスでもある。多様化への対応はベンダーとしては大変だが、積極的に対応していくと松岡氏。この多様な環境の1つである仮想環境に対応する新製品が「Kaspersky Security for Virtualization」だ。
オンプレミスであれ、パブリック、プライベートクラウドであれ、どんな環境で動いているかに関わらずファイルシステムレベルでインストールし対策するエンドポイントセキュリティツールは何らか必要だ。これがクラウドになったからといって、ネットワークの出入り口だけを監視すればいいというものではない。
特にクラウド環境では、仮想マシンを多数運用することで、リソース利用効率を向上させる使い方が一般的だ。その仮想マシンが100、200、あるいは1,000、2,000とあればそれぞれにエンドポイントセキュリティ製品を入れる必要がある。その管理の手間は、クラウドになれば楽になるわけではない。すべてのマシンが最新の定義データベースになっているのかの管理を考えても、相当な手間となることは容易に想像できる。
この仮想環境でのセキュリティ対策ツールの適用を容易にするのが、Kaspersky Security for Virtualizationというわけだ。これは、VMwareのVMware vShieldというレイヤーを活用することで実現している。このvShieldの上にKSV Virtual Applianceを1つだけ置き、各仮想マシンにはエージェントを導入することなく、ハイパーバイザーの上の環境を一括してセキュリティ対策できる。定義データベースの更新も、KSV Virtual Applianceにだけ適用すればいい。
これにより、仮想マシンを新たに立ち上げても、それに対しいちいちセキュリティ対策ツールを導入する必要はない。運用管理の手間は、大きく削減されるはずだ。この製品のライセンスは、仮想化環境を動かすサーバーのCPUライセンスとなっている。上で動かす仮想マシンの数には依存しないので、ダイナミックに仮想マシンの数が変化するような環境でも導入しやすい。
Kaspersky Security for Virtualizationは、オンプレミスやクラウドかに限らず、仮想化環境で多くの仮想マシンを利用したいユーザーには、必須とも言えるソリューションだろう。とはいえ残念なのは、この仕組みがVMware ESXiかVMware vCenter Serverでしか利用できないことだ。当たり前だが、vShieldがVMwareにしかないためだ。したがって、せっかくこの仕組みで対策していても、その仮想マシンをたとえばHyper-Vに持っていくとなれば、Hyper-V上で別途セキュリティ対策ツールの導入を考えなければならない。
このあたりは、現状では仮想化ハイパーバイザーベンダーの足並みが揃っているわけではない。今後さらに仮想化の利用は促進していくことが予想されるため、セキュリティベンダー、仮想化ハイパーバイザーベンダーが協力し、どんな環境でも同様なセキュリティ対策がとれるようになることが、ユーザーの立場からは望まれるところだ。
利便性を求め、ユーザー環境は多様化している。それに伴い、セキュリティリスクも多様化してきている。何に対しどこまでセキュリティ対策を施すのか、それを見極め素早く対応することが必要だ。その対策方法は、何もツール導入だけではない。運用なども含め、ツール活用とうまく組み合わせ対処していくことになる。そうすることが、コストを増大させずに賢い対策を実現することになる。そのためには、環境の違いを理解し、それに最適な対策方法を適宜選択できるスキルが、ユーザーのIT部門には求められている。