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イノベーション創発の起点として「未来洞察」が有用なワケ

(第4回:未来洞察・前編) 


「博報堂イノベーション・ラボ」は、10年ほど前から、生活者視点で未来変化の兆しを洞察し、社会や企業の中長期的な未来シナリオを開発する「未来洞察」プログラムで、イノベーション創発活動の支援をしてきました。新商品の開発や、中期的な経営戦略など、目的に合わせたワークデザインで、標準的に3カ月くらいのプロジェクト型のプログラムを提供しています。リーマンショックや震災を経た近年は依頼件数が増加傾向にあり、企業の中で「未来洞察」への関心が高まってきているようです。今回の連載ではイノベーション創発の起点として未来洞察がなぜ有用なのか、実際にどのようにして実施するのかについて2回に分けてご紹介していきます。

なぜ「未来洞察」が求められているのか?

 時代の変化のスピードがますます速くなるなかで、イノベーション創発に向けた企業の取り組みが活発になってきました。それに伴って、さまざまな分析ツールや思考法、ワークショップ手法なども数多く紹介されるようになってきました。

 しかし、その一方で、多様でスピード感のある変化がますます進むなかでは、先行企業や成功事例を手本にキャッチアップしていくといった、従来の日本企業が強みとしてきた“改善型のアプローチ”が通用しづらいことから、何から始めれば良いのかわからないという悩みを持つ企業も多いようです。また、さまざまな取り組みをしたにもかかわらず、既視感のあるアイデアしか出てこないといった悩みを耳にすることもあります。

 こうした悩みの背景には、ある種の“思考の罠”があることが経験的に分かってきました。代表的なものをいくつか紹介しましょう。

イノベーション創発にあたって陥りがちな“思考の罠”

競争思考の罠

 現在の市場競争環境のなかでの競合との差別化や、成功事業の優位性を守ることに腐心するあまり、新しい市場や需要を創造する視点に注力しにくい。

短期思考の罠

 既存の事業計画やロードマップに沿って考える癖がついているため、そこから外れた異質・不確実な知識・情報を排除し、短期的に都合のよい情報ばかりにヒントを求めてしまいがち。

技術思考の罠

 技術進化や技術的な実現可能性という観点が強く、生活者のライフスタイルの中で、製品やサービスがどう利用されるのかを具体的にイメージすることが苦手。

内製思考の罠

 内製志向が強いがゆえに、外部の異質なアイデアをどう活用すればよいかわからず、結局は社内による既視感のあるアイデアばかりが残り、変化を生み出しにくい。

 これらの思考の罠に陥ると、どうしても「現状追認のバイアス」が強くなるようで、そのことが未来に対して創造的に取り組むことを困難にする一因になっているのではないかと考えられます。「未来洞察」の考え方は、このような現状追認のバイアスを排除し、創造的な未来への機会探索や着想を得ることを可能にするものです。このような背景が、事業開発や研究開発、経営改革などのさまざまなイノベーション創発テーマで「未来洞察」が必要とされるケースの増大につながっているのかもしれません。

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博報堂が考える「イノベーション創発プロセス」

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この記事の著者

石野 幹生(イシノ ミキオ)

1996年、早稲田大学大学院理工学研究科修了(建築学専攻)後、博報堂に入社。マーケティング職、ストラテジックプラニング職を経て、2003年より博報堂イノベーション・ラボの前身である博報堂フォーサイトに参加。以来、自動車・情報通信・エレクトロニクス・流通等、幅広い業種におけるイノベーション創発コンサル...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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