クラウドのトップベンダーから顧客のインターネットを実現する会社に
PCやスマートフォンだけでなく、いまや自動車や家電、自動販売機に至るさまざまな機器がインターネットにつながるようになった。さらには、各種センサーなどもネットにつながり、数多くのデータをビッグデータとして蓄積している。これを、モノのインターネットである"Internet of Things"と表現するのは最近よく見かける。ベニオフ氏は、そこからさらに進んで、いまや”Internet of Everything”の時代を迎えると言う。
これを裏付けるのが、モバイル環境の急速な拡大、つまりはスマートフォンの爆発的な普及だ。現状までで15億台ほどのスマートフォンが出荷されており、これがすぐに50億台といった数に到達するという。50億という莫大な数のスマートフォンが市場に出れば、さらに低価格化も進んでより多くのスマートフォンが市場に出ていくことになるだろう。そうなれば、地球上のすべての人がインターネットに接続するようになるのも、あながち遠い将来ではないかもしれない。
これらスマートフォンユーザーは、当然のように何らかのソーシャルネットワークを利用する。これもまた、極めて大きな変化だとベニオフ氏は指摘する。
「50億の人が、やがてはソーシャルネットワークにつながるようになります。さらに、500億ものすべての『モノ』もクラウドにつながるようになります。これは極めて大きな変化です」(ベニオフ氏)
500億というすさまじい数がつながる「モノのインターネット」、あるいはソーシャルネットで50億の人がつながりサービスやモノについてつぶやくようになるという世の中の変化を、どう捉えそれに対応したビジネスを企業は行っていけばいいのか。ここで肝心なのは、「つながるすべてのモノの裏には顧客がいます。これ以上に重要なことはありません」とベニオフ氏が言うように、たんにモノがつながるだけでなく、そこにはそのモノを使っている人がいること。そして、ソーシャルネットワークにつぶやきがあるということは、そのつぶやきの言葉を発した顧客が常にいるということ。これらをしっかりと認識し、ビジネスを進めていく必要があるとベニオフ氏は言うのだ。
このモノやソーシャルネットのつぶやきの裏側にいる顧客に着目したのが「顧客のインターネット」であり、それを活用する企業が、今回のイベントのテーマにもなっている「Customer Company」ということだ。で、Salesforce.comはその「顧客のインターネット」のために何をするのかと言うと、そのためのプラットフォーム「Salesforce Platform」を提供するのだと。
このSalesforce Platformは、既存のPaaS環境であるForce.comやHeroku、ExactTarget FUELというインフラ部分があり、その上にさまざまなものを接続するためのAPIレイヤー、さらにChatter Mobileアプリケーションのレイヤーが来て、ユーザーの使うアプリケーションがその上に載るという構成となる。これについては、詳細について語られなかったので、おそらく11月18日からサンフランシスコで開催されるDreamforce 2013で明らかになるのではないだろうか。
今回のベニオフ氏の基調講演を聴いていて感じた変化は、クラウドサービスというカテゴリーでライバルを見つけそれらを凌駕しようとするのではなく、Customer Companyという新たなテーマのためにクラウドなどのテクノロジーを最大限に活用していくことにしたのだなと言うこと。これは、クラウドはあくまでも手段であり、それが目的ではないということだ。