オープンソースのソフトウェアでは .NETは敷居が高い
2011年8月、Windows Azureはまだ日本での実績もそれほど多くなかった。マイクロソフトとしては、実績を増やすためにもオープンソース系ソフトウェアにも是非Windows Azureを使って欲しいという意向があった。一方、シックス・アパートにもクラウドにフォーカスしていく方針が立てられていた。Movable TypeをWindows Azureに対応させる取り組みはこれら思惑が相まって、まずは実験的に始まった。「実験的とはいえ、最初に成田で両社の技術者が合宿し検討するところから始まりました。マイクロソフトとしては、オープンソースの人たちがAzureと密になって欲しい狙いがあったと思います」と柳下氏。
合宿では、これがうまくいかない、こんなものが足りないといった項目をMovable Typeを例に洗い出すところから始まった。足りないところ、改良して欲しいところの情報は、その後日本からマイクロソフト本社にフィードバックもされた。とはいえ「当時の結論としては、Microsoft .NETでアプリケーションを書かないと、うまくいかないところがある。それは、シックス・アパートとしては敷居が高いということになりました」と柳下氏は振り返る。
Windows Azureへの対応は、この時は会社の正式プロジェクトとしては動き出さなかった。しかし、引き続き情報収集は続ける。その状況が変化したのが2011年10月、シックス・アパートだけでなく複数のオープンソース・ソフトウェアを扱う企業が参加し、Windows Azure対応を検討する技術者合宿が熱海で再び開催された。シックス・アパートで製品企画と開発を担当する高山裕司氏も、2回目の合宿に参加した。「Movable TypeのVer5のころです。Azureに対応させるには、Movable Typeのソースコードにも手を入れる必要があると考え、より深く踏み込むことにしました」と高山氏。
一方、2012年、パソナキャリアカンパニーでは、サイトリニューアルに際して、CMSツールとしてMovable TypeとPowerCMSの組み合わせを稼働させるクラウドサービスを検討していた。日本マイクロソフトであればサポートもしっかりしてくれる。さらにシックス・アパートもAzureへの対応を正式表明。当時は、CMSのツールを使ってAzure上にコンテンツを配信するものはあったが、CMSのアプリケーションをAzure上で動かすものはMovable Typeしかなかったことなどもあり、Movable TypeをWindows Azureの上で使うことを、パソナキャリアは決める。このことも、Movable Type on Windows Azureプロジェクトの後押しとなったと柳下氏は言う。