AWSとは異なるクラウド上のシステムデザインが、Windows Azureにはある
Windows Azureを使う際に、SQL データベースを使わずにWindows Azure上にSQL Serverをインストールする使い方もある。これならば、苦労したことのいくつかは対処する必要はなかったかもしれない。しかしながら、Movable Typeの運用では、可用性、信頼性の確保のためにアプリケーションとデータベースは別サーバーでの運用を推奨している。データベースのトランザクション負荷は、日常的にそれほど多いわけではない。そのために別のサーバーインスタンスを利用するのは「もったいない、SQL Azureを使ったほうがいい」という判断があった。さらに、「同じテストプログラムで検証したのですが、SQL Azureを使ったほうが速かったという結果もありました」と柳下氏。
とはいえ「Movable TypeをWindows Azure Marketplaceに載せていくことも検討しています」とも言う。これは、クラウドと一言で言ってもニーズによってさまざまな選択肢を用意すべきだという考えだ。シックス・アパートでは、自社サービスとしてMovable Typeのクラウド版を提供している。これはシックス・アパート自身がMovable Typeを管理するマネージドサービスで、「顧客がどうしてもおざなりになりがちなところを、シックス・アパートがしっかりサポートするものです」と柳下氏。バックアップなどの運用管理面を、手厚くサポートするリッチなクラウドサービスだ。
また、クラウドを考えれば、Amazon Web Services(AWS)は無視できない。AWSのマーケットプレイスにもMovable Typeは対応している。「AWS版は、自分でシステム設計をしたい、たとえばフロントにキャッシュを別途入れるなど、AWSの上でシステム化したいニーズにおもに応えるものです」と柳下氏。
そして、もう1つがWindows Azure対応版だ。
「Azure版は、別のAzure上で動くシステムと連携するなど、インテグレーション的な要素が強いと考えています。これは、社内システムがAzure化するイメージです。なので、Active Directoryにも対応でき、Azureを含めた企業のWindows環境の中でMovable Typeが動くことになります」(柳下氏)
AWSとは異なるクラウド上のシステムデザインが、Windows Azureにはあると柳下氏は言う。たとえば、AzureのストレージやSQL データベースには、AWSのようにアベイラビリティーゾーンを設定しなくても永続性がある。こういった違いも、運用管理性を考えればシステム設計に大きく影響する。
「Movable TypeをAzureに対応する道は、長く険しいものがありました。とはいえ、マイクロソフトは、それを献身的にサポートしてくれました。情報は揃いつつあるので、今後Azureというクラウドサービスを、オープンソース・ソフトウェアを開発している人たちが理解できるかどうかで、世界が変わっていくのではないでしょうか」(柳下氏)
オープンソースのソフトウェアならば、クラウドプラットフォームとしてはすぐにAWSが思い浮かぶかもしれない。どんな環境でそのアプリケーションを運用したいのか。クラウド上だけでなく、既存のオンプレミス環境なども考慮し、目的にあったクラウドを選択する必要がある。