大学院時代のメインテーマは「地球まるごとデータベース」
「『なるにはBOOKS』を読みまくったのですが、その中でシステムエンジニアになる本が一番面白かったんです」(渡辺さん)
自分は手先が不器用だったので、何か物を作る職業は難しそう。とはいえ、プログラムなら器用でなくても作れるのではと考えたのだ。さらに、数学や物理は好きなほうだったこともあり、お茶の水女子大学の理学部を受験、見事合格し情報科学科に入学する。女子大を選んだのは、就職が有利だと思ったから。
「理系の大学は推薦で就職先が決まることが多いと聞いていました。その際に共学だと男性と競い合うことになります。それだと不利かなと考えました」
とはいえ卒業しても企業に就職せず、研究者になる道を選ぶ。
情報科学科に入学して「プログラミングはわりと自分の性に合っている」と感じた渡辺さん。学部、大学院の修士までは市川哲彦教授(元山口大学教授 故人)の下で学んだ。市川先生が米国留学することとなり大学院生の面倒を見ることができない。そこで日本データベース学会会長も務めた増永良文教授の研究室に移ることに。当時の研究のメインテーマは、『地球まるごとデータベース』。バーチャルワールド・データベースで仮想世界の動きをすべてデータベース化するというもの。
これは、いわゆるバーチャルリアリティの世界をデータベース化するものらしい。仮想世界に協調作業空間を作る。それはオンライン上の遠隔会議場のようなもので、そこでの参加者の動きをデータ化しデータベースに入れるのだ。こう説明されても、なかなか理解するのが難しい研究テーマだ。
研究は順調に進んで無事にドクター論文も通り、大学院を卒業する。その後は奈良女子大学に移り研究を続けることになる。研究対象は引き続きバーチャルリアリティ、その中で「可視化」がテーマだった。
「バーチャルな空間に透明なクエリーボールを入れ移動させます。その際に、クエリーボールに設定された条件に合った空間にさしかかると、その空間情報がボールの中に浮かび上がってくるものを作っていました」
奈良女子大学には、他の分野から来ている研究者と一緒に研究をする機会にも恵まれた。オゾンホールに関する研究ではオゾンホール周辺の化学物質の可視化を3Dで行うといったことも実施した。その後はお茶の水女子大学に講師として戻ることに。その際には自分の研究室を持ち学生指導も行うこととなる。