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クリステンセン流の事業づくり手法「Future Backアプローチ」とは何か?

イノベーターへの処方箋:Innosight流イノベーションの興し方(第3回)


 『イノベーションのジレンマ』を執筆した「有名すぎる経営学者」クレイトン・クリステンセンは破壊的イノベーションについて調べただけでなく、打開策についても研究と実践を重ねました。大企業は規模の大きな既存事業を持っているがゆえに、革新的な技術に対して、出遅れ、中途半端な取り組みになってしまい、新興企業にその座を一気に奪われます。ジレンマが起きる原則を踏まえなければ、変革は成功しません。では、クリステンセンが設立したInnosightがどのように大企業におけるイノベーションに取り組むのか見ていきましょう。

古くてもイノベーティブな会社は存在するのか?

 イノベーティブな企業を想像してみると、Amazon、Facebook、Apple、Google、楽天、ソフトバンク等々の企業を思いつくでしょうか。Forbesのランキングを見ると、1位はアメリカのIT企業Salesforce.com、2位はアメリカの製薬企業であるAlexionとなっていて、9位に日本の楽天がランクインしています。ちなみにForbesのランキングは、Innovator’s DNA社独自の「イノベーションプレミアム」という時価総額や収益性を元にした指標が用いられています。この指標は、定常的な事業収入を割り引いて、新製品や新規事業、さらには研究成果がもたらす企業価値の増加分を算出することにより、企業の成長性や革新度を数値化したものです。詳しくはクリステンセン・ダイヤ―・グレガーセン著『イノベーションのDNA』(翔泳社)に記載されています。

 さて、このリストを眺めていくと、非常に新しい企業が多いことに気づきます。Salesforce.comは1999年設立、先日NASDAQに上場した百度(Baidu)は2000年に設立されたばかりです。これはクリスステンセンが予見したように、イノベーションのジレンマが蔓延っているためでしょうか?

 恐らくそうでしょう。一度、事業が拡大し、一定の地位を確立すると、会社はその地位を前提に自己最適化されます。テクノロジーの変化や顧客のニーズが移り変わることによって徐々に出現する市場は、大企業にとって取り組みにくい市場なのです。クリステンセンは、ジレンマが生じる要因を5つの原則という形で『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)に記しています。

  • 原則1:企業は顧客と投資家に資源を依存している
  • 原則2:小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
  • 原則3:存在しない市場は分析できない
  • 原則4:組織の能力は無能力の決定的要因になる
  • 原則5:技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない

 新しい企業がイノベーティブであることはよくありそうですが、古くてもイノベーティブであることは可能なのでしょうか?ジレンマから抜け出すことはできるものなのでしょうか。

次のページ
P&Gのチャレンジ―真の「イノベーティブ・カンパニー」は体系的に取り組む

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

日本アイ・ビー・エム、日立グローバルストレージテクノロジーズ、iTiDコンサルティングを経て、イノベーションコンサルティングおよびハンズオン事業開発支援に特化したINDEE Japanを設立。HDDの開発エンジニア時代に「イノベーションのジレンマ」に触れ、イノベーションの道を歩み続けることを決意する。その著...

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