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『EnterpriseZine Press』

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イノベーターの本棚

“次の流れ”を読むための『イノベーションの最終解』

(第20回)イノベーションに効く翻訳書11:『イノベーションの最終解』 

クリステンセンが予測した「勝ち馬」とは?

 “Seeing What’s Next”という原題は、直訳すれば「次に来るのは何か?」ということになります。ここに記されているイノベーションの理論はさまざまな立場や場面で応用することができます。個人レベルでは、株式投資の対象を、研究者なら技術開発の方向性を、戦略立案に携わっているならその戦略を、決める指針になります。ところが、その指針となる理論はクリステンセンが執筆してから10年も経っているにも関わらず、まだまだ難解であることは否めません。

 何よりも忘れてはいけないのが、新規参入が成功するチャンスは限られているということです。新規参入企業が成功した暁には、既存企業を破壊するような打撃を与えることになりますが、競争変数が変化するタイミングはそうそう頻繁には起きないため、難解な破壊的イノベーション理論を知らなくてもなんとかなるのです。

 一方で、市場が大きく変化し、競争変数が変わるタイミングにおいては、従来の経営理論では説明しきれない要素がからみ、勝ち馬を当てることができなくなってしまいます。『イノベーションの最終解』では変革が予想される教育・航空・半導体・医療・通信の業界についてどのような勝ち馬が今後出るのかを予想しています。これらの予想は10年前の予想であることを忘れてしまうほど、極めて的を射ていると言わざるを得ません。いくつかの例を挙げてみましょう。

  • オンラインで講義を提供する大学が台頭する(当時はMOOCという言葉はなかった)
  • エンブラエル・ボンバルディアなどのリージョナル航空機メーカーはボーイングやエアバスに反撃されない
  • 大手航空会社にとってこれ以上のハイエンド顧客という逃げ場はないため、LCCの台頭を黙認できず、LCCに勝負を挑む(現在、多くの大手がLCCに参入もしくは出資している)
  • 半導体業界は過剰満足の兆候があり、インテルにとって参入の動機づけが少ないようなカスタマイズ性・利便性の高い新規参入がある(モバイル機器向けのCPUライセンスのみを供給するARMのビジネスモデルは究極のカスタマイズ性と言える)
  • 医療業界では、低スキルや専門外の人が行えるようになる治療が増える(Davinciによる腹腔鏡手術、Denaも参入した遺伝子診断、妊娠検査薬、糖尿病患者自身によるインシュリン注射、AED、Switch OTC、等々)
  • 通信業界では破壊が起きた直後なのでしばらくは既存企業が顕在だが、IM市場は大きく成長するかもしれない(3G→LTEは既存企業が牽引、LINEは躍進)

イノベーションのペースが加速している中で何を信じるか

 イノベーションのペースが加速している中で、未来に向けてどのような技術に賭けるべきなのか、どういう取引先と付き合い、どういうベンチャーに投資をすべきなのか、どの市場を大切にするべきなのか、誰しも知りたい状況になっています。未来のデータは存在しないため、不安にも駆られるでしょう。しかし、未来を示唆するシグナルへの感度を高めるのは案外たやすいものです。

 もし「投資で大きく儲けたい」なら、変化のシグナルを出している業界に名乗りを上げた企業で、戦い方を知っている企業に賭けましょう。もし、無難な投資をしたいのなら、変化のシグナルがほとんどない業界のトップ企業に投資するのがバフェット氏も実践している王道です。

 もし「新しいビジネスを始めたい」なら、変化のシグナルを出している業界に参入するのがよいでしょう。しかも、大手が見向きもしないような市場のニッチを見つけるのがコツです。

 もし「所属する業界が変化のシグナルを出している」なら、早晩「良い会社」「良い製品」「良い性能」の基準が変わります。目指す姿を変え、考え方を変えて戦っていきましょう。

「イノベーションのジレンマ」実践講座1:Innovator's DNAワークショップ、7月31日開催!!

イノベーターに必要な5つの力とイノベーションチームのデザイン手法

 

クリステンセン教授設立のInnosight社の日本公認パートナー、INDEE Japanの津嶋辰郎氏、津田真吾氏を講師に迎え『イノベーションのジレンマ』の内容を理解し、既存企業において「組織づくり」を行う方法を解説します。

 

日時:2014年7月31日(木)13:00~19:30(受付開始は12:30)

参加料:59,400円(税込)

参加特典:イノベーターDNA診断【WEB診断】(13,000円相当)/懇親会が無料

会場:株式会社翔泳社(東京・四谷三丁目)

お申込・詳細 ⇒ こちら

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

日本アイ・ビー・エム、日立グローバルストレージテクノロジーズ、iTiDコンサルティングを経て、イノベーションコンサルティングおよびハンズオン事業開発支援に特化したINDEE Japanを設立。HDDの開発エンジニア時代に「イノベーションのジレンマ」に触れ、イノベーションの道を歩み続けることを決意する。その著...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/5984 2014/07/08 06:55

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