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競争優位が「瞬時に崩れ去る」時代の新しい戦略書『競争優位の終焉』

(第22回)イノベーションに効く翻訳書13:『競争優位の終焉 市場の変化に合わせて、戦略を動かし続ける』

「一時的な競争優位」を構築することは、イノベーションに習熟することである

 シナリオ2は、市場の衰退を予見し、健全に撤退するための戦略です。現場主導で価値を提供してきている日本企業にとって、ある意味最も苦手とする領域とも考えらますが、本書では図2に示す「6つの分類のマトリックス」により撤退戦略を整理することを提唱しています。

 このマトリックスは、自社の既存事業もしくは新規事業がどれに該当するかを整理するために活用するものです。しかし、これも分類の結果をどう判断するかは、経営判断に委ねられることになります。分類結果を受け入れるためにも「衰退の前兆を素直に認める必要」があり、そのためには「経営者の意思として判断を下す」のか、または「組織としての判断指標を構築する」かの2択となり、多くの大企業にとっては特に後者の構築が重要な取り組みになると考えられます。

6つの分類のマトリックスによる「撤退戦略」
▲ 図2:6つの分類のマトリックスによる「撤退戦略」

 シナリオ3は、資源配分を見直し、効率性を高めるための組織戦略です。現場の効率化はある意味日本企業のお家芸であるように思われますが、それは垂直統合された自社現場での話です。ここでの著者のメッセージは、“競争力の無い社内資産”を再整理することの必要性にあります。

 それは長い時間を掛けて構築された社内プロセスを見直す事であり、近年増加している様々な外部へのアウトソースサービスなどを有効利用することが代表的な対策になります。ただし注意点としては、長い時間掛けて構築してきたプロセスは一朝一夕には変えられません。ここでもシナリオ1で述べられた機動性の源泉である、小さな改革を積み重ねて取り組むことが重要になってきます。

イノベーションに習熟する

 シナリオ4は、イノベーションに習熟するというテーマ。これは、イノベーションの文化を社内に構築するというイノベーションが求められている企業にとって最も重要なチャレンジになると思います。イノベーションに習熟している例外的成長企業は、既存事業を効率的に回すプロセスと平行して、図3に示すようなイノベーション創出のためのプロセスを通して一時的な競争優位獲得を獲得しています。

イノベーション創出のためのプロセスを通じた「一時的な競争優位獲得」
▲ 図3:イノベーション創出のためのプロセスを通じた「一時的な競争優位獲得」

次のページ
「一時的な競争優位」を構築するための6つのステップ

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この記事の著者

津嶋 辰郎(ツシマ タツロウ)

INDEE Japan 代表取締役マネージングディレクター。
小学校時代に少年剣士として日本一を達成。大学では人力飛行機チームを創設し、鳥人間コンテストでは2度の優勝と日本記録樹立を果たす。その後、レーシングカーコンストラクターである童夢に参画し空力デザイナーとしてシリーズチャンピオンを獲得。半導体製...

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