ITR金谷氏が語るクラウド時代のシステム運用課題
近年、システムの規模の拡大・複雑化に伴い、運用管理のソリューションやツールも細分化し拡大傾向にある。現時点でクラウド・コンピューティングの導入は3割程度であり、まだまだ増加傾向にあることから、運用管理分野の成長も間違いないと考えられる。
プライベートクラウドの運用管理のあり方として、金谷氏は「運用の自動化」と「IT部門がコストセンターから社内サービス・プロバイダへと転換を図ること」をあげる。クラウド管理ソフトウエア等により運用の自動化を図る一方で、ITサービス管理プロセスを導入し、ITスタッフのマインドや責任について意識 を改革し、成果を再定義するといった体制自体の見直しも欠かせないという。
金谷氏は各企業の事例の調査分析から、プライベートクラウドとサーバ仮想化の比較を論じた。サーバ仮想統合については、一時コストではハードウェアコストの削減が大きいものの、仮想化レイヤの介在により運用管理の負荷が増え、管理コストは一時的に高まる可能性がある。之に対して、プライベートクラウド環境では、運用やITサービス管理の自動化によって、維持コストの削減が見込まれる。特にプロビジョニングにおける削減効果が大きく、新規サーバの立ち上げや構成変更などが多い企業には特にメリットが大きいという。
こうしたコストの増減を踏まえ、トータルなコストを比較すると、サーバ統合および運用自動化によるコスト削減効果は大きいことが明らかになった。
さらに物理環境から、仮想環境、プライベートクラウドへと移行するに伴って必要とされる管理能力を掲示。運用管理の難易度が高まる傾向にあることを指摘した。そして金谷氏は「運用管理の難易度は高まる傾向にあり、IT部門がサービスプロバイダとしてプライベートクラウドを管理していくためには、外部ベンダーの支援を上手に活用し、クラウド管理ツールによる運用自動化を進めることが得策」と語った。
「AOplus+」でおこなう運用自動化からクラウド管理へ
運用管理に関する相談の声の増加を受け、伊藤忠テクノソリューションズは、2011年秋より運用自動化サービス「AOplus」、そしてクラウド管理機能を追加した「AOplus+」を2014年6月より提供開始した。
いずれも日立製作所のIT運用自動化基盤「JP1/Automatic Operation」を中核としており、要件定義(アセスメント)から、設計・構築、そして導入後のサポートまでをワンストップで提供する。現在の導入例としてJP1ユーザ、IaaS環境の構築、そして定型的な運用作業などがあり、「手順書化できるか否か」が自動化の判断基準だという。こうした管理自動化の考え方をクラウド環境にも対応させたのが「AOplus+」だ。
「AOplus+」の対応範囲は、様々なビジネス企画をIT企画に落とし込んだ先、「設計・構築」の部分である。渥美氏は「この部分をパターン化し、運用自動化でとどまるのではなく、構築までの自動化を図る。それが運用変革への第一歩となる」と語る。
「AOplus+」では管理・運用者がWebを通じてアクセスし、利用者に必要なものをリソースプールから選択して業務システムへと提供するという流れになっている。たとえば、フロントシステムを構築する際には、VMマシンやデータベース、JBossなどのほか、監視設定追加までをパターン化して迅速に設定することができる。
こうした作業をスムーズに行い、より快適な運用管理を実現するために、「AOplus+」はオペレーション操作を極限まで簡素化している。また、パターンデプロイ実装まで提供しており、他社ベンダ製品やOSSにも対応している他、独自の業務アプリなどにもアセスメントにより導入可否や効果測定を行っているという。そしてJP1とuCosminexusといった品質とサポートが担保された製品を使っていることも重要なポイントとして紹介された。
渥美氏は「AOplus+」の導入効果について「人が行うべきビジネスとITの企画の後、設計・構築の部分を共通化することでスピード、コスト、品質の面で大きなアドバンテージとなる。IT競争力を創造する運用をぜひ『AOplus+』で目指してほしい」と訴えた。
先端ソリューションを支える日立オープンミドルウェア
プライベートクラウドの運用管理においては、ハードウエアや仮想基盤、OS、ミドルウェア、業務アプリケーションなどの分かりやすい監視と、プロビジョニングや環境設定などの自動化、そしてリソース利用や把握などの重要性が増しているという。
その中の自動化の課題を解決するソリューションとして先に紹介された「AOplus+」の中核をなすのが「JP1/IM-Navigation Platform」、「JP1/Automatic Operation」、そしてマスターイメージコントローラー「uCosminexus Service Director」などの日立製作所のミドルウェアだ。
たとえば設定作業にはミスがつきものだが、運用ポータル兼Web手順書「JP1/IM-Navigation Platform」であれば運用手順が表示され、それに従うことで誰でも作業が容易になり、品質の標準化が図れる。また運用自動化基盤ソフトウエア「JP1/Automatic Operation(JP1/AO)」は自動化の基盤機能に加え、現場のノウハウを反映したコンテンツ(フローや部品)を提供しており、それを使用したエージェントレスでの容易な自動化処理が実現できる。さらに独自コンテンツを簡単に作成・編集し、登録することも可能だ。こうした自動化は、定常的な運用、臨時運用、障害発生時の一時対処など、幅広い運用シーンで適用されているという。
そして、仮想サーバ追加の複雑な作業もそれぞれの機器に対して行うことは手間がかかり、ミスも少なくない。「JP1/AO」で自動化コンテンツを実行すれば、複数のツールの操作もなく、誰でも同じ作業品質を維持できる。仮想サーバ1台の追加、デプロイ作業にかかる時間で60%も削減できたという。
そして、コントロールの中核となっているのがマスターイメージコントローラー「uCosminexus Service Director」だ。仮想環境を構築する際のミドルウェアを含めた初期設定において、パラメータ設計値と根拠を記述したExcelの定数設計書をそのまま設定値に反映することができる。時間短縮やコスト削減はもちろん、人手によるミスのリスクを軽減でき、安定した品質で基盤構築が可能になる。
こうした優れた性能を持つミドルウエアの連携が、インフラ環境におけるアプリケーション設定までの自動化を実現するというわけだ。
運用現場の変革をサポートするプロフェッショナルサービス
CTCグループの中でも、特に運用管理に特化しているのがCTCシステムマネジメント(CTCS)である。同社において長く運用業務に携わってきた実感から、伊藤氏もまた運用管理の複雑化を指摘する。そして課題解決のためのテーマとして「標準化」「高度化」「効率化」をあげ、ITシステム運用には仮想サーバのデプロイまでが求められ、運用自動化ソリューションの有効活用への期待が高まっていると語る。
そうした運用自動化導入を支援するプロフェッショナルサービスが「AOplus+」である。CTCSは日立のJP1テクニカルパートナーとしての技術力と30年におよぶ運用実績を持ち、要件定義から設計・構築、サポートまでトータルにテクニカルサービスを提供してきた。「AOplus+」にも対応しており、高い技術力とともに、経験に裏打ちされたナレッジやノウハウを駆使したきめ細やかなサービスが受けられるという。しかも、運用自動化に対する顧客の不安に対してフェーズに応じた対応が可能であり、要件定義(アセスメント)から導入、導入後の維持管理までワンストップで提供が可能だ。
要件定義フェーズでは、運用ヒアリングシートをもとにヒアリングや手順分析を行い、JP1/AO導入時の自動化適用範囲や効果、システム構成を可視化する。きめ細やかな自動化分析結果や報告書により、JP1/AO導入効果の事前判断が可能になるというわけだ。また設計構築フェーズでは、「AOplus+」環境をトータルにセットアップが可能である。加えてコンテンツ設計(フローや部品)を提供することで、スムーズな自動オペレーションが実現する。また顧客の使用する運用手順に合わせた独自の自動化コンテンツを作成できることも大きな利点といえるだろう。さらに、システムリリース後もアセスメントから導入まで関わったCTCSのエンジニアがサポートすることで、安定した運営が可能になる。
こうした「AOplus+」の運用自動化が効果的な領域として、サービスデスクなど「ITサービスに関する業務運用」や、変更作業や仮想マシンデプロイなどの「定期的・定型的な運用作業」、そして「障害時の一時切り分けや対応」、構成やキャパシティ管理などの「ITサービス/インフラに関する運用業務管理」などがある。
最後に伊藤氏は「変化の激しいITの世界において、お客様が変わることを恐れずにいられるよう、変わらない安心を提供し続けていきたい。ぜひ、CTCにIT運用の相談をしてほしい」と語り、セッションを締めた。