IBMはハイブリッド・クラウドをエンタープライズで本格的に利用できるようにする
IBMのクラウド担当シニア・バイス・プレジデント ロバート・ルブラン氏は「クラウドは、最初はテクノロジーだったが、今はビジネスの変革です」と言う。さまざまなビジネス市場では、既存のプレイヤー同士が既存の戦い方で競争するのではなく、まったく新しいプレイヤーが参入しまったく新しい方法でビジネスの勝者となっている。これはまさに市場を「壊すのか壊されるのか」の時代であり「壊すほうが楽しい」とルブラン氏。この変革によって市場を破壊する際に活用されるのがクラウドだ。
そのクラウドの中でも、今回IBMは改めてハイブリッドクラウドの明確で強いメッセージを発信した。具体的には、これまでオンプレミスで利用してきたエンタープライズ・アプリケーションのクラウドへの移植性向上、ハイブリッド構成を取る際の制御と透過性、セキュリティ性、さらにハイブリッド構成のクラウドでアプリケーションを開発する開発者の利便性向上の3つについて新たな製品、サービスを発表した。
エンタープライズ・アプリケーションの移植性向上で活用するのが、コンテナ型仮想化の技術であるDockerだ。これにIBM独自の拡張を施した「IBM Enterprise Containers」を新たに提供する。Docker APIによりネイティブのLinuxコンテナを拡張しており、自動化の実現とエンタープライズレベルの可視性、制御性、セキュリティ性を備えている。これを利用して「必要なものだけをクラウドに動かします」とルブラン氏。このコンテナは、SoftLayer上のコンピュータリソースだけでなく、オンプレミスやプライベートクラウド上のIBM Power Systems、IBM System zの上でも利用可能だ。
ハイブリッドクラウド構成を取るとなれば、当然ながらオンプレミスとの間でデータのやり取りをしなければならない。とはいえ、個人情報などのデータはなるべくクラウドには上げずに利用したいのが普通だろう。その際に安全かつ容易にデータをやり取りするために、昨年のInsightで発表したデータのクレンジングなどを行うサービス「IBM DataWorks」を拡張した。そのままクラウドに持って行くべきではない個人に関する情報などは、カラム単位でマスクするといった操作がGUIで直感的に行える。これにより、ユーザーのハイブリッド環境での利便性向上に貢献する。
またハイブリッド環境でのオーケストレーションでは、デプロイがより簡単になっている。そしてこのオーケストレーションの対象にはモバイル環境も入ってくる。