「モダンなクラウドアプリケーション」とは
エリソン氏は、クラウドアプリケーションが今までのアプリケーションとは違うという話から始めた。
「一部のベンダーでは、従来アプリケーションをクラウドに載せただけというものもある。昔と同じものをAmazon Web Servicesに載せただけで、クラウドアプリケーションになるのか。クラウドとはそんなものなのか。クラウドアプリケーションは、誰か他人のデータセンターで運用すればいいというものではない。私は、そうは思わない」(エリソン氏)
クラウドアプリケーションは10年、20年前のアプリケーションとは違い、モダンなアプリケーションでなければならない。エリソン氏はその違いを自社のHCM(Human Capital Management)のクラウドアプリケーションを題材に説明した。モダンなHCMのアプリケーションでは、社内の人材管理をするだけでなく、有能な人材を見つける機能もいる。新卒であれ中途であれ、有能な人材を見つけたい。彼らは今、FacebookやTwitterを使っている。であれば、そういったところから見つけられなければならない。
「それができるのが、モダンなクラウドアプリケーションだ。10年前の人材管理のアプリケーションにはソーシャルネットワークの機能なんてない。当時はそんなものを使って採用活動をするなんて、誰も思いもしなかった」
10年、20年前のアプリケーションをただインターネットサーバーに移行し、それをクラウドアプリケーションと呼んでも、決して成功しない。古いアプリケーションは、現在のニーズに対し的確に機能しないからだ。
もう1つクラウドアプリケーションで重要となるのが、それ自体がソーシャルの機能を持っていることだ。それにより、アプリケーションを人事部門や管理職だけでなくすべての従業員が使う。アプリケーションを使って従業員同士がやり取りし、コミュニケーションをとる。グループを作りそこでプロジェクトを進めることもできる。昔のアプリケーションでは、ソーシャルネットワークと統合されていないので不可能というわけだ。
トランザクションとデータウェアハウスの融合
もう1つのモダンなクラウドアプリケーションの特長が、マニュアルがないこと。これはつまり使いやすいということだ。
FacebookやTwitterのような、人々が馴染みやすいユーザーインターフェイスを持っていることでそれを実現している。これはSAPのERPやOracle EBSのような、かつてのアプリケーションのインターフェイスとは全く異なる。機能も全く違うので、結果的にユーザーインターフェイスも異なるものになる。
そして、かつてはトランザクション・プロセスシステムがあって、別にデータウェアハウスがあった。これは昔のアプリケーションの構築方法だ。現代のモダンなクラウドアプリケーションではトランザクションアプリケーションとデータウェアハウスが統合化されている。トランザクション・システムから離れてデータウェアハウスに行かずとも、必要なデータすべてにすぐにアクセスできる。
たとえば人事のシステムで採用のオファーを出そうとする際に、部門の予算を超えていれば自動でアラートが出るといったことが実現できる。オファーができるかどうかの判断に必要なデータが同じシステムに入っているからだ。
さらに、モダンなクラウドアプリケーションでは、コストが安いのも特長だとエリソン氏は指摘する。運用費用は遙かに安く、導入展開も安価。見落としがちだがトレーニングコストも安い。「今の人たちは、Facebookの使い方は分かっている。なので、トレーニングを1からする必要ない。コンピュータの用意もインストールもパッチ当ても必要ない。すべては、それはらクラウドプロバイダーがやる。企業は、会社の情報を入れるだけでいい」(エリソン氏)
つまり、たとえばHCMのアプリケーションを使いたければ、人材管理のビジネスのことだけを企業は考えればいい。それで結果的にコストは削減され、アプリケーション実装の時間も短縮される。