EMCが2015年1月に発表したデータ保護に関する意識調査「EMC Global Data Protection Index」から、日本市場におけるデータ保護の実情が見えてくる。EMCジャパン DPS事業本部 システムエンジニアリング部長 神近孝之氏がいくつかポイントを挙げた。
「70%が自社の成功にとってデータ保護は不可欠であると考え、48%が過去1年間にダウンタイムまたはデータロスを経験しています」と神近氏。国内企業における1社あたりのデータロスとダウンタイムにより生じた損失は年々上昇しており、過去1年間では約2億1900万円に上ることが明らかになった。
加えて神近氏はもう1つ指摘した。国内企業のITスタッフで「問題発生後のデータ復旧に自信がない」との回答は91%にも上る(全世界では71%)。この回答はシステムの高度化、複雑化、さらにクラウド利用も加わっているためか、3年前の調査よりも数値は上昇している。データバックアップとリストアは非常時対策とはいえ、自信のない状態で運用されているのなら問題だ。
神近氏は「どのような状況にあっても、すべてのデータは保護されなくてはなりません」と断言。EMCでは「Data Protection Everywhere」というコンセプトをもとにオンプレミス、仮想化環境、ハイブリッドクラウド、クラウド内生成データなど、多様な環境をカバーするようにデータ保護製品群が構成されている。
データ保護の中心「Data Domain」新製品
まずはData Domain。2015年6月からハイエンドモデルとエントリモデル(ローエンド)の2製品が新しく提供される。ハイエンドモデルとなるのが「Data Domain DD9500」。DD990の後継機種となり、470TBを8時間以内にバックアップできるなどバックアップ速度が2倍高速化した。DD Boostありで1時間あたり58.7TB、DD Boostなしで1時間あたり27.7TB。最大で1.7PBの実効容量がある。最大で1080ストリーム数を実現するため、最大で540のリモートサイトを統合することが可能とされている。
もう1つ、エントリモデルの新製品が「Data Domain DD2200-4TB」。従来のDD2200と同じハードウェアで実効容量を4TBに制限したもので、DD160の後継機種となる。DD Boost性能は1時間あたり4.7TBとなり、DD160と比較して4倍以上となる。データ整合性などはハイエンドと同じレベルで実現する。
バックアップアプライアンスを超越するソフトウェア機能
加えて神近氏はData Domainについて「単なるバックアップアプライアンスの領域を超越しています」とソフトウェアの強みを強調した。もともと基礎技術として重複排除、レプリケーション、整合性チェックを持ち、これらを拡張して各種アプリケーション統合の強化がされていたり(後述)、EMCのプライマリストレージとなるVMAX3からバックアップサーバーを介することなく直接バックアップを可能としている。
さらにEMC Worldでは「Project Falcon」が発表された。バックアップアプライアンスとなるData Domainの機能をソフトウェアで提供するものだ。いわばソフトウェア定義のData Domainだ。現状はコンセプトが発表された段階で、実際の製品は年末から来年にかけて発表される。例えばクラウドプロバイダーがマルチテナントで運用していたときにテナントごとにバックアップをとることができるなどが考えられている。
Data Lake(Hadoopベースのビッグデータ)のデータ保護
EMC Worldで出た新しい話題として神近氏は「データレイクの保護」を挙げた。Hadoop環境に膨大なデータが蓄積されつつあるなか、バックアップが課題とされている。
EMCからはData Domainにてエンタープライズクラスのデータ保護を行えることがアピールされた。技術的にはData DomainにHDFSのデータを吸い上げることになるものの、高度な重複排除やデータ完全性の担保となる機能が有利になることがあらためてメリットとして強調されたという。
またEMC NetworkerにあるNSM(Networker Snapshot Management)機能がIsilonに対応することになり、Isilonのスナップショット管理も可能となった。そのためIsilonで作成したスナップショットをData Domainにバックアップするということも可能だ(もちろんIsilonから直接バックアップも可能)。