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週刊DBオンライン 谷川耕一

SAPもサイボウズもオンプレミスからクラウドへのシフトが明らかに


ソフトウェアのライセンスを販売していたベンダーによる、クラウドベースのサブスクリプション型ビジネスモデルへの転換が本格化している。以前よく言われていたのが、ソフトウェアライセンスを販売していたベンダーは、クラウド型ビジネスモデルに変わるのは難しいと言うこと。差し当たっての案件規模が小さくなり、売上げが縮小しかねないからだ。エンタープライズ領域においてライセンスの販売ビジネスで成功していれば、1案件の規模は数千万円、数億円なんてこともあるだろう。なので、大手の顧客企業に製品導入が決まれば、導入時には大きなライセンス収入が発生することになる。そうなると、営業スタイルもどうしても大型案件狙いになりがちだ。短期決戦で早く結果を出したい、そんな営業担当者も多いだろう。一方でクラウドのビジネスは、基本は1ヶ月の利用料を支払うスタイルだ。年間利用料を前倒しで支払う契約もあるが、ライセンス販売の場合より案件規模はだいぶ小さくなるのが普通だ。

SAPのビジネスはもうすぐオンプレミスをクラウドが上回る

 SAPやOracleのように「それなりに値が張るソフトウェア」を販売してきたベンダーは、クラウド時代になり他のソフトウェアベンダーが競合になるのではなく、クラウドかライセンスかで社内競合しかねない状況もある。さらに日本では、これにSIなどのビジネスパートナーが絡んでくる。クラウドでは利益を確保しにくいパートナー経由の販売が多ければ、それもクラウドへのシフトでは二の足を踏む状況だったはずだ。

 そんな足枷をはめられていると思われていたSAPだが、2015年上半期においては、グローバルでクラウドのビジネスが前年同期比で92%増、日本は152%増となっている。対して、オンプレミスのソフトウェアのビジネスはグローバルで6%、日本は35%増だ。もちろん母数が小さいので伸び率が高くなるのだとしても、勢いは完全にクラウドに移っていると見て良さそうだ。

 「クラウドへのトランジション・モードに入っています。利益率などは一時的に下るものもありますが、それも想定よりいいペースで推移しています」と言うのは、社長就任から1年が経過したSAPジャパン 代表取締役社長の福田 譲氏だ。SAPでは、グローバルで2018年度にはオンプレミスのビジネスがクラウドを上回ると予測している。ところが、北米ではすでにクラウドがオンプレミスを上回る状況にあるとのことだ。

SAPジャパン 代表取締役社長 福田 譲氏
SAPジャパン 代表取締役社長 福田 譲氏

 現状、SAPのクラウドビジネスは、買収したタレントマネージメントサービスである「SuccessFactors」などが牽引しているところだろう。SAPの本命とも言えるHANAベースのシンプルERPは、まだSimple Financeなど一部しかクラウドで提供されていない。ここのラインナップが揃ってくれば、既存のオンプレミス型ERPアプリケーションのクラウド化も加速する可能性は高い。そうなれば確かに2018年度を待たずに、オンプレミスとクラウドの逆転が訪れそうだ。

 そんなSAPの変化は、このクラウド型へのシフトだけではない。もう1つがHANA Platformを提供することになり、より総合的なITベンダーへの脱皮もある。とくにドイツ発のインダストリー4.0なども後押ししており、IoTを活用するソリューションでは主要なベンダーの1つに名乗りを上げている。この変化は、どうやら同社の人材育成面にも変化をもたらしているようだ。かつてはアプリケーション・パッケージ専業ベンダーとして、各種企業の業務が分かる人材が前面に立ち営業活動をしてきた。その頃はIT技術の話はむしろせず、業務改革のためにどうしたらいいかという業務コンサルタント的なアプローチだっただろう。

 それがHANAの登場で、データベースやプログラム開発などかなりIT技術的な面もアピールするようになる。とはいえ、それはSAPの本質ではなかったようだ。細かいレベルの技術スペックを比較するようなベンチマーク争い的な世界は、それまでその領域で鎬を削ってきたOracleやマイクロソフトのほうがさすがに得意だった。

 ここにきて、さらに市場は次のステップに進んでいる。それがIoTを活用するようなこれからの新しい市場だ。ここでは、業務的なアプローチも必要だしIoTを活用するためのIT技術のアプローチも必要だ。Javaでこういうプログラミングができるといった話はなくてもいいが、総合的にIoTでつながる世界になった際に、どのようにIT技術が活かされるのかは語れなければならない。IoTを使った新たな業務改革の姿が、提案できる力も必要だ。これはアプリケーションのライセンスを販売してきた営業スキルセットとは、少し異なるものだろう。

 IoT時代に必要なこういった幅広いITスキルと未来を予測する想像力をもった人材は、今後のIT業界を支えていく重要な存在になるだろう。SAPジャパンでは「Glocalization」と称し、新卒の営業社員全員を米国にあるSAPのGlobal Sales Academyで6ヶ月間の研修を受ける人材育成を実践している。新たな人材は、そういったところで育成されるのかもしれない。クラウドの積み上げ型ビジネスモデルと同様、人材育成は地道な積み上げが結果になって出てくるものだろう。若手の人材育成に投資できるSAPは、侮れないなと思うところだ。

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クラウドのビジネスが積み上がったから大きな投資ができる

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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