患者のセラピーにも人との1対1の関係性構築は役立つ
「マイクロソフト、Oracle、SAPに次いで、来年は世界で4番目のソフトウェアの会社になります」(ベニオフ氏)
当初はこのような大きな規模の会社になるとは考えてもいなかったと言うが、ベニオフ氏の口ぶりは同社の成長の勢いに明らかに自信がありそうだった。当然ながら、4位というポジションに甘んじる気はないだろう。
dreamforceでは例年、特定の慈善活動にフォーカスを当て取り上げている。今回取り上げたのは癌の治療に関して。「現在は情報科学が癌の治療に役立っている」とベニオフ氏。生命科学の世界を進歩させるために頑張っている組織として、乳癌治療の研究を行っているカリフォルニア大学の研究組織が紹介された。
ここでは乳癌の治療はもちろん、乳癌になっても生き残こるための研究を行っている。それには1人1人のニーズに合わせた治療が必要だ。さらには長期的に取り組み、情報を蓄積していくことが重要となる。多くの患者のデータが必要であり、そのデータを扱うためにSalesforceのサービスを利用している。
Salesforceが提供する顧客との1対1の関係性を築く仕組みは、患者のセラピーにも適用できるとのこと。最適な治療、ケアのための情報を提供が、Salesforceの活用で可能となっているのだ。実際、乳癌という病気は1種類だけではない。1人1人癌のタイプも違えば、リスク要因も異なる。さらには、治療のための医療オプションが効果を発揮しているかも人によって異なるのだ。仮に同じくらいの腫瘍の大きさであっても、ある人にはリスクは高く、別な人にはそれほどリスクが高くない場合もある。
こういった個人ごとの違いを把握するため、患者のスクリーニング検査を正確にやらなければならない。それが結果的には、予防にもつながる。より多くのスクリーニング検査を正確に行うために、テストそのものも改善し、テストに参加する人も増やさないとならない。状況が正確に把握できるようになれば、スクリーニング検査を行う頻度も人に合わせて減らすこともできるだろう。
「今までと同じことを繰り返していても結果は変わりません。新しいことをやらなければなりません」とカリフォルニア大学の医師であるローラ・エセルマン氏は言う。精密医療を行い、パーソナル化された分子レベルの治療を行う。それにより1人1人に適合した形で治療を実施する。パーソナル化は治療だけでなく患者のケアの仕方にも絡んでくる。このような医療分野での先進的な取り組みが今、世界中で行われるようになっている。医療におけるこういった活動が、企業にどのような影響を与えるのか。「企業もこういった取り組みから新たなヒントを得ることができます」とベニオフ氏は言う。