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Workday Rising開催、SaaSならではERPの全貌が明らかに


 2015年9月29日、米国ラスベガスでSaaSベンダーであるWorkdayの年次カンファレンスイベント「Workday Rising 2015」が開催された。このイベントへの参加者は5,500人あまり。Oracleやセールスフォース・ドットコム、IBMなどのイベントに比べればまだまだ少ないが、会場を訪れている人たちの情報収集意欲はむしろかなり強いものがあると感じだ。というのも、参加者の65%ほどがユーザーかこれからWorkdayのサービスを利用しようとしている人たち。彼らの多くは20万円ほどの費用を支払っての参加であり、Workdayが今後どのような発展をしていくのかを見極め、Workdayを使いこなすためにどうすればいいかを知るために真剣にセッションに参加していた。

ターゲットは、グローバルでビジネス展開する大企業

創業者で会長のデイブ・ダフィールド氏(左)と同じく創業者でCEOのアニール・ブースリ氏(右)

創業者で会長のデイブ・ダフィールド氏(左)と、
同じく創業者でCEOのアニール・ブースリ氏(右)

 日本でビジネスを本格的に始めたのが2015年1月、なのでWorkdayの認知度はまだまだ国内では低い。とはいえ、米国、ヨーロッパを中心にSaaSのERPベンダーとしてはすでに実績ある企業として知られる。Workdayは2005年に創業。創業者で会長のデイブ・ダフィールド氏は、Oracleに買収されたERPベンダー PeopleSoftの元CEOだ。同じく創業者でCEOのアニール・ブースリ氏もまた、PeopleSoftのチーフ・ストラテジストだった人物だ。

 オープニングの基調講演のステージに登壇したダフィールド氏とブースリ氏は、同社のビジネスが順調に右肩上がりで成長していることを報告した。2015年度の売上高は7億8,790万ドル、2016年度にはそれが11億5,000万ドルになると予測している。SaaSでサブスクライブ型のビジネスなので、この成長の度合いは順調にユーザーが積み上がってきていることを想像させる。

 実際のビジネスの内訳は、HCM(Human Capital Management)が1,062社、Financialsが160社、新たに提供を開始した大学などの教育機関向けサービスStudentが24組織となっている。顧客としては日本でも最近ビジネスを開始して話題となっているビデオ配信のNetflix、HP、IBM、コカコーラ・カンパニーなど大手企業がWorkdayのサービスを採用している。クラウド、SaaSは、中小規模の企業が初期投資を抑えて気軽に採用できるサービスのイメージがあるが、Workdayの場合はグローバル展開している大手企業が顧客の中心だ。

 これは、たんに、人事部門が行う事務処理をSaaSで効率化するといったものではなく、人材をグローバルレベルで有効活用することをサポートする。そこにこそ、Workdayのサービスを利用するメリットがあるからだ。Workday側で企業規模を限定しているというよりは、Workdayのメリットを発揮しようとした結果がグローバルレベルのビジネス展開をしている企業での採用となったというわけだ。

新機能をいち早く紹介

 今回の基調講演で、明確に競合を批判する発言は見られなかったが、ところどころでPeopleSoftを敵対的に買収したOracleを揶揄する表現があり、そのたびに会場は爆笑するといったシーンが見られた。たとえば、レガシーの波、クライアントサーバーのそれより大きな波があり、その波をOracleのCEOが力を入れているヨットが上手く乗り越えられないといったアニメーションが出てくるなど。ダフィールド氏がこういったジョークを飛ばすのは、どうやらイベントの恒例となっているようだ。

レガシーの波、クライアントサーバーのそれより大きな波があり、その波をOracleのCEOが力を入れているヨットが上手く乗り越えられないといったアニメーションが出てくる

レガシーの波、クライアントサーバーのそれより大きな波があり、
その波をOracleのCEOが力を入れているヨットが上手く乗り越えられない

 Workdayは2006年からSaaSを開始し、以降、機能、サービスの拡張を続け2015年9月ですでに25回のバージョンアップを行っている。現状では3月、9月の年2回のペースで更新を行っている。「Workdayのサービスは、かなり速いペースで進化しています」とブースリ氏。バージョン12の頃には、更新の際に23時間ほどのサービスダウンタイムが発生していた。ここ最近はそれが4時間ほどに短縮している。今後はマイクロサービス化することで、このバージョンアップ時のダウンタイムを実質的にゼロにすることがブースリ氏から約束された。

 昨年のRisingではアナリティクス機能を発表し、以降のバージョンアップで順次機能を実装している。今回はアナリティクス機能の拡張として、バージョン26でスコアカード機能を提供することが発表された。これはFinancialsやHCMで利用できるもので、まずはFinancialsのところで基本的な指標について分析をすぐに行えるようにする「Packaged Scorecard」を提供する。

 さらにFinancialsの拡張としては「Workday Planning」も発表された。これは予算管理を行うための機能で、ダイナミックに数値を変更して予測する機能を持っている。利用するデータはFinancialsの実データであり、それを使ってリアルタイムな予算管理が実現できる。

 ユニークな機能として発表されたのが、バージョン27で実装予定のスプレッドシート機能「Worksheets」だ。これはクラウドのデータをエクスポートしてExcelなどのソフトウェアに渡するものではなく、完全にWorkdayの中に組み込まれた機能として提供される。Googleスプレッドシートなどと比べても遜色ない機能を持っているようで、デモンストレーションではそれがかなりレスポンス良く利用できる様子が伝えられた。

 HCMの新たな機能として発表されたのが「Workdayラーニング」だ。これはグローバルレベルでの従業員の育成を支援する機能で、こちらもバージョン27で提供される。従来のラーニングマネジメントシステムは、個々の従業員の状況とは連携せず、独立した形で運用されるオンライン学習管理の仕組みが多い。Workdayラーニングは学習を行う従業員を認識し、従業員が入社初日なのか、新しいマネージャなのか、さらには現在の担当業務のスキルや専門知識の向上を目指しているかなど、従業員ライフサイクルのどの時点にいるかを把握した上で最適なラーニングを行えるようにする。もちろん既存のWorkday HCMと密に連携した形での利用が可能だ。

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「Power of One」-すべてのユーザーが同じバージョンを利用する

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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