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週刊DBオンライン 谷川耕一

今年のOpenWorldは「クラウド」押し―ラリー・エリソンが語る3つのクラウド


 今週はOracleの年次カンファレンスイベント「Oracle OpenWorld」が開催、CTO ラリー・エリソン氏の姿を拝むべく米国サンフランシスコを訪れた。Oracle Database 12c Release2の話題もあったが、今年のOpenWorldはとにかく「クラウド」を前面に押し出したイベントとなっていた。

CTOに降格した(?)ラリー・エリソン氏
CTOに降格した(?)ラリー・エリソン氏

 しいつものように最初のキーノートセッションのステージをつとめるのは、「CEOからCTOに降格したからデモも自分でやるのだ」とジョークを飛ばすエリソン氏だ。彼はOracleのクラウドがIaaS、PaaS、SaaSの全てを取り揃えていることが優位性であり、全て持っているのはOracle以外にはマイクロソフトしかないと言う。OracleはさらにSaaSにおいては、かなり幅広いラインナップを持っていると強みを強調する。

 クラウドを全方位で取り揃えているOracleだが、市場への本格参入は昨年のOpenWorldのタイミング。もちろんそれまでもSaaSを中心にクラウドのサービスは提供していたが、全てを揃え本腰を入れると宣言したのはほんの1年前のことだ。そういう意味ではまだまだ後発組であり、クラウドマーケットに大きな存在感を示しているわけではない。

IaaSでは安さも目指すが大事なのはTCOと価格性能比

 最初のキーノートセッションでエリソン氏は、Oracleがなぜこの3つのクラウドを用意したかを説明した。

 「15年ほど前にセールスフォース・ドットコムとネットスイートがSaaSのサービスを始めた。当時はSaaSなんて言葉もなかった」(エリソン氏)

 2社がSaaSのビジネスを始めるきっかけ、それに関わっているのがまさにこのエリソン氏だったりもする。ネットワーク越しにソフトウェアをサービスとして提供する。

 この取り組みは画期的なものであり、エリソン氏自身もOracleのアプリケーションをSaaS用に書き換えることにする。それがOracle Fusion Applicationsの開発だ。

 「Fusion Applicationsを作っている最中に、SaaSを実現するにはミドルウェアが必要だと言うことでそれも作った。それがFusion Middlewareだ」(エリソン氏)

 Fusion Applicationsの開発にはかなり苦労し、当初の予測よりもかなり時間がかかって市場に登場することになる。とはいえ、たんに既存のアプリケーションをクラウドに持っていくのではなく、クラウド用に最適化することが重要なのだとエリソン氏は言う。SaaS化をしてみて次に必要だと分かったのがPaaSだった。ユーザーは、SaaSをコンフィグレーションのレベル以上に拡張して使いたい。それに対応するために提供することにしたのがPaaSだった。

 そして、PaaSを出してみたら顧客は、さらにOracle製品以外で開発したアプリケーションもクラウドに載せて利用したいと言う。それに応えるためにIaaSも提供することにしたのだエリソン氏。つまり、OracleのクラウドSaaSから始まり、それをより良く使うためにPaaS、IaaSを加えたということ。この流れは、セールスフォース・ドットコムがSaaSから始まりforce.comで独自のPaaSを作り、さらにHerokuの買収でIaaSを取り込んだのと似ている。一方でAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft AzureなどのIaaSから始まってPaaSへと進む道とは異なるものだろう。

 こういうクラウドビジネス発展の経緯もあり、OracleではIaaSをあまり重視していないとも言える。必要だから加えたものであり、もともとはSaaSをより良く使うためのものという発想だ。なので、直接的にAWSやAzure、IBM SoftLayerなどのインフラサービスと対決するものではないだろう。

 とはいえエリソン氏はIaaSを出すからには「AWSのサービスと同等かそれより安価なものを提供する」と言う。それだけ先行して圧倒的な存在感をすでに示しているベンダーに対しても、Oracleが本気でこの市場で戦うということだろう。

 しかしながら、この価格の戦略にはエリソン氏らしい言い分も。サービスの提供価格そのものが安いというのもあるが、最終的に大事なのTCOが安いこと、そして価格性能比も重要だという。

 「高度なコンピューティングのサービスに関しては、Oracleのほうが安く提供できる可能性がある。OracleではこのTCOを安くすることや価格性能比が高くなることこそを目指す。」(エリソン氏)

 Oracleがクラウドを安くできるのは、データセンターへの投資がほぼ一巡したうえに、クラウドを構成するハードウェア、ソフトウェアを全て自社製品でまかなうことができるからである。エリソン氏が言うように、SaaSから始まってIaaSまで揃えることになった過程は良く理解できる。既存のエンタープライズ系のアプリケーションをクラウド化するアプローチでは、この流れが正解だろう。

 一方で、もともと柔軟性と俊敏性のあるインフラをクラウドに求めるユーザーもいるのも事実。その場合は、IaaSから入ってPaaSへ発展する流れが正解だろう。いまのところは後者から入ったユーザーのほうがクラウドのマーケットにはたくさんいる。今後SaaSを中心としたクラウドの利用が大きく伸びてくれば、Oracleのシナリオがかなり現実味を帯びてくるのかもしれない。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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