企業システムにおけるストレージの役割と課題
昨今、企業が保持するデータの総量は右肩上がりに膨張しつつあります。このデータの保管庫として利用されてきたものがストレージシステムです。現在トレンドとなってきているのは、この膨大なデータをただ保管するだけでなく、データウェアハウスやビッグデータとして活用するというニーズです。ストレージはデータを単に格納するだけでなく、データを活用するために格納したデータに迅速にアクセスするという役割も期待されるケースも出てきているのです。
一方、従来ストレージシステムには磁気ディスクが利用されてきました。磁気ディスクの容量は年々倍増してきたものの、ディスク単独での読み取り・書き込みのスピードはこの15年でおよそ100倍程度しか向上していません。
一方でコンピューターの処理の中枢であるCPUは同じ15年で1,000倍までにも高速化しており、さらに仮想化やクラウドのテクノロジーによって多くのアプリケーションからのアクセスが集中するようになってきたため、ディスクへの並列読み書きで高速化を実現するRAIDのテクノロジーだけでは対応ができなくなってきています。
フラッシュの登場と進化
この問題を磁気ディスクではなく、もっと高速なフラッシュメモリで解決しようというアプローチが生まれてきました。フラッシュメモリはUSBメモリなどの形で利用されてきましたが、近年デジタルカメラはもちろん、スマートフォンや、ノートPCに磁気ディスクの代わりに搭載するSSDとしての需要が増え、技術革新によって大容量化、低価格化が進んでいます。
フラッシュメモリは磁気ディスクとは違い、半導体素子から直接データを読み書きするため、ディスクの回転待ち時間などもなく、非常に高速にデータを読み書きすることが可能です。そのスピードは磁気ディスクの数十倍から数百倍、そして今後は数千倍にもなるような次世代メモリの登場も予定されています。
フラッシュメモリやそれに続く次世代メモリは、コンピューターのシステムメモリとは異なり電源が消失してもデータを失わない不揮発性のメモリで、さらに磁気ディスクと違い可動部分がないため、故障率も小さくなります。また、データの記憶素子を従来の2次元から3次元化することで近年では磁気ディスクと同じサイズで8TB/16TBなどの大容量を実現するモデルも市場に投入されています。近い将来フラッシュメモリは磁気ディスクを性能単価だけでなく、容量単価でも上回る勢いです。