ハイブリッドクラウドの実現にはソフトウェア・デファインド・ストレージが必須
「IBMが今なぜソフトウェア・デファインド・ストレージに力を入れているかと言うと、ユーザーがハイブリッドクラウドの環境を求めているからです」と日本IBMストレージ・エバンジェリストの佐野正和氏は述べる。
センサーやデバイスが生成するデータ、画像やビデオデータ。デジタル・テクノロジーの進化は、データの種類や量の増殖を引き起こし、データはあらゆる場所で蓄積されるようになってきた。市場競争力の確保に向け、新たなデータと企業データを掛け合わせて独自のビジネス価値を創造するには、これからのIT基盤として、パブリック、プライベート、オンプレミスの環境を組み合わせて利用するハイブリッドクラウドが自ずと求められる。
つまり、アプリケーションやデータをパブリックとオンプレミス間などで自由に行き来させる必要があるのだ。その際、アプリケーションの移動はサーバー仮想化の技術で簡単にできる。ところがアプリケーションが使う“データ”は簡単に移動できない。「ハイブリッド環境ではデータが“人質”です。今はクラウドに行ったら行ったきりになってしまいます」(佐野氏)。データが足枷となり、他のクラウドに移ったりオンプレミスに戻したりするのは容易ではない。
理由は、手もとで使っているストレージと同じストレージが、パブリッククラウドにあるわけではないためだ。そうなると、オンプレミスと同じ構成をクラウドでとることはできず、同じ運用管理手法も適用できない。
「たとえば災害対策で、ストレージの遠隔コピー機能を使っていたとします。同じような機能がクラウドにあっても互換性がないので、今までと同じやり方では運用できないのです」(佐野氏)
オンプレミスとクラウドで同じようにデータやストレージ基盤を扱うには、ソフトウェア・デファインドでなければうまくいかないと佐野氏は強調する。逆にソフトウェア・デファインド・ストレージ(SDS)を使えば、個々のストレージ装置の違いをソフトウェアが吸収してくれる。したがって、複数の異機種ストレージを束ねて使うこともでき、どの環境にあっても同じ運用管理が可能だ。
大量データの移行でも、ソフトウェア・デファインドの機能は有効だ。大容量なデータ移行には時間がかかるので、ある時点までのデータを新しい環境に移行し、処理を止めて既存システムと同期をとる必要があるだろう。これに対し、たとえばIBMのソフトウェア・デファインド・ストレージ技術の一つ「Spectrum Scale」のAFM(Active File Management)分散ディスク・キャッシング・テクノロジーを使えば、アプリケーションを止めずに拠点間の大容量データの移行が可能となる。
また、セキュリティリスクを担保するには集中管理するほうがいい。その上で拠点のファイルサーバー増設などの要求に応えようとすると、ストレージのスナップショット機能などを使うことになる。これには高機能ストレージを使うのが普通で高コストとなる。ソフトウェア・デファインド・ストレージを使えば、拠点のローカルストレージも含め、中央の大規模ストレージとともに一元管理できる。ソフトウェアでセキュリティなど必要な機能は提供できるので、拠点ストレージは安価で汎用的なものでいい。
ユーザーはどこにどんなストレージがあるかを意識する必要はない。管理者もさまざまなストレージがあっても一元的にアクセス管理などを行える。マルチテナント機能で権限に応じストレージ領域をきっちりと分離することもできるだろう。「ソフトウェア・デファインド・ストレージであれば、今行っているストレージの運用管理をそのままクラウドなどの新たな環境に適用できます」(佐野氏)。これは今後のストレージ活用では重要なポイントとなる。
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