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週刊DBオンライン 谷川耕一

パブリックと同じものを顧客のデータセンターで動かすもう1つのクラウドの可能性


 先週は、「Oracle Cloud Days Tokyo 2015」が開催された。それに合わせ、Oracle OpenWorldで発表されたOracle Database 12c Release2の説明会や、新しいSPARCプロセッサ「M7」を搭載するコンバージド・インフラストラクチャの戦略説明なども行われた。Oracle Database Release2は、現状はベータ版の位置づけ。パートナーや限定された顧客が利用し評価している。OpenWorldの時点で1年以内での市場投入が表明されている。

時代に合わせアーキテクチャを変えてきたから成功できた

 「Oracleがこれまで成功してきた理由は、常に時代に合わせアーキテクチャを変更してきたからです」と語るのは、おなじみ、Oracle Corporation データベースサーバー技術担当 エグゼクティブ・バイスプレジデント アンディ・メンデルソン氏。今は、Oracle Databaseをクラウドで最適に利用できるように変化させている。クラウドに必要なのは俊敏性、柔軟性、大規模な環境を低コストで管理できることだという。

アンディ・メンデルソン氏
アンディ・メンデルソン氏

 クラウドで先行するAmazon Web ServicesとOracleでは、クラウドへのアプローチに違いがある。Oracleには既存顧客があり、彼らにはすでに多くのIT投資がある。なので顧客はクラウド一気にではなく徐々に移行する。結果的にハイブリッドクラウドの環境を利用する。そのために必要なものを提供するのがOracleであり、たとえばオンプレミスもクラウドも管理を統合できるOracle Enterprise Managerを昨年6月から提供している。

 そんなOracleが、今もっともクラウドで重要視しているのがセキュリティだ。

 「Oracleでは、パブリッククラウドのデータはすべて暗号化します。顧客の要望がなくても暗号化します。暗号鍵の管理は、顧客が自分できるようにします。また、監査証跡はオンプレミスに置くことができるようにし、クラウドを管理する立場のOracleでも改竄できないようにします」(メンデルソン氏)

 多くの顧客はこれから10年、20年という長い時間をかけ徐々にパブリッククラウドに移行する。その移行期に何をするかが重要だとメンデルソン氏は言う。エンタープライズ企業の多くは、パブリッククラウドではまずはアプリケーションの開発やテストを行い、それが良いユースケースになる。もう1つ現時点でもパブリッククラウドが最適なのが、バックアップだと指摘する。

 「あまり重要でないアプリケーションからパブリッククラウドに移行するでしょう。アナリティクスのアプリケーションなどがまずは対象です。それから災害対策もパブリッククラウドの利用が適しています。災害が起こって待機系システムで稼働させる際にも、じつは本番と同じだけのコンピュータリソースが必要です。それを物理で用意しておくのではなく、パブリッククラウドで柔軟に用意するのです」(メンデルソン氏)

 データベースクラウドのサービスについては、Oracleはこの領域に参入したばかり。とはいえ「ユーザー数は伸びています」とメンデルソン氏は自信を示す。このデータベースクラウドのサービスでは、Oracleならではのハイエンドな「Exadata Service」もある。こちらは、試しに購入するのが簡単ではないExadataを初期投資なしで利用できることに。データベースクラウドのサービスには、開発用途であれば無償のサービスも用意されている。

Oracle Database 12c Release2ではマルチテナントとインメモリを強化

 データベースクラウドのサービスで使われているのは、最新バージョンのOracle Database 12cだ。次期バージョンとなるRelease2では、マルチテナントとインメモリ機能の拡張が大きなトピックだ。

 「大規模なデータベースシステムでは、管理における人件費の割合が大きくなります。データベースの運用コストのじつに60%は人件費だと言われています。マルチテナント機能はキャペックスもオペックスも下げることができます」(メンデルソン氏)

 Release1では、コンテナデータベースごとに252個のプラガブルデータベースを動かすことができた。Release2ではプラガブルデータベースの数は4,096にまで増える。さらに、ダウンタイムなしにクローンを作れるようになり、「PDBリフレッシュ」機能を使うことでシンプルな操作でクローンデータベース間のデータ同期もできる。また、ダウンタイムなしでVMwareのvMotionのようにロケーション移動も可能となる。

 「さらに、プラガブルデータベース間でアプリケーションのオブジェクト共有もできるようになります。この機能を使えば、たとえばISVなどクラウドでサービスを行う際に共通データやメタデータを1つに管理可能となります」(メンデルソン氏)

 Oracleのインメモリデータベースは、アナリティクス用からトランザクションに行ったSAP HANAより倍以上速いという。インメモリ機能の拡張としては、Release2でActive Data Guardに対応する。さらにヒートマップも追加され、自動あるいはポリシーベースで、メモリからのデータ退避を柔軟に管理できるようになる。

 さらに新しく提供された「SPARC M7」プロセッサでは、インメモリ用の処理の一部をシリコン上に実装している。これは「SQL in Silicon」とも呼べる機能であり、圧縮などの処理はインテルのプロセッサよりかなり高性能になる。その他にも、開発者向け機能などが多数Release2では拡張されている。Release2は派手な新機能はないように見えるが、クラウドで使うための拡張が細かいレベルでなされているようだ。主力製品であるデータベースのこのような拡張の方向性を見ても、Oracleがクラウドに真剣に取り組んでいる姿を見ることができる。

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ハードウェアもソフトウェアもあるからできる独自のクラウドサービス

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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