苦手な半田付けから逃れるために(?)回路設計からDBプロへ転身!
HiRDBの開発部門で白木さんが担当するのは、「SQL制御」と呼ばれる機能。SQL文を解釈し、最も効率のいい実行パスを割り出すのがその主な役目で、データベースの性能を大きく左右するまさに心臓部というべきコア機能だ。その設計開発に長年携わる「生粋のデータベース開発者」である白木さんだが、実は日立に入社した当時はデータベースとはまったく無縁の部署に配属された。
「大学時代は物理専攻で、金属の物性の研究をしていました。研究で使う簡単なプログラムの開発は行っていましたが、データベースとはまったく無縁で、日立に入社した当初の配属先もハードウェア部門でした。でも、ハードウェアの仕事はいろんな意味でプレッシャーがきつくて……」
特に苦労したのが「半田付け」。白木さんが当時担当していたのは、ハイエンドサーバの基板設計。この仕事で扱う基板部品は、モノによっては何十万もするというシロモノ。もし万が一その半田付け作業に失敗すれば、この基板が一瞬にしてパーになってしまう。
「私が必死に半田付けをしていると、イタズラ好きな先輩が後ろからそっと耳元で『もし失敗したら、ボーナスが飛ぶよ……』なんてささやくんです(笑)。もちろん冗談ですが、それぐらいシビアな作業であったことは確かです。どうしても半田付けがうまくならなくて、以前お世話になった社内の先輩に電話で相談してみたんです」
そのときたまたま相談したのが、データベースの開発部門にいる先輩だった。実は白木さん、新人研修の一環として、データベース部門での実習を経験していたのだ。そのときお世話になった先輩に相談してみたところ、とんとん拍子でデータベース部門への異動が決まり、遅ればせながらDBプロとしてのキャリアがスタートしたのだった。
とはいえ、それまで基板の回路設計という「こてこてのハードウェア」の世界にいた白木さん。当然のことながら、新人研修で学んだデータベースのデの字くらいの知識しかなかったという。
「今思うと、『データベース? なにそれ、おいしいの?』というレベルでしたね(笑)。にもかかわらず、異動して1カ月後にはSQL制御のサブコンポーネントの開発リーダーに任命されて、しかもなぜかメンバーには下には主任クラスの先輩もいて……無茶振りもいいところですよね! もちろん今になって振り返れば、『データベースエンジニアとして一刻も早く立ち上がってほしい』という上司の親心だったと思っていますが」
果たして上司の思惑通り(?)、ここから白木さんの猛勉強が始まる。担当するコンポーネントのソースコードを、ひたすら頭から読み込んだ。明けても暮れてもソースコードとにらめっこ。どうしても分からないところがあると、先輩にレクチャーをお願いした。幸い、HiRDBの開発部隊には国内屈指のSQL技術者が集まっており、そんな猛者たちの間で揉まれるうち、もともと潜在的に持っていたDBプロとしての素質が開花したのか、白木さんもほどなくSQL制御の専門家として独り立ちできるようになったという。