RDBMSだけではなくなりつつあるデータ管理基盤
データの増加とシステムの多様化により、データ管理基盤も変化が強いられている。1980年代から主流にはRDBMSが君臨し続けているものの(途中でオブジェクト指向やXMLという分野があったものの、RDBMSに吸収された)、2010年代に入る前ごろからNoSQLやHadoop/SparkなどRDBMS以外のものも台頭してきている。
では、いま企業はデータ管理システムに何を使っているか(「ITR User View(2016年6月調査)」より)。複数回答で質問したところ、断然多いのが「商用RDBMS」(80%)、続いて「オープンソースRDBMS」(43.6%)となる。ほかのHadoop、Spark、NoSQL、XMLDB、オブジェクトDB、階層型/ネットワーク型DBはどれも1割台にとどまる。Sparkはまだ新しいためか7.7%に留まっている。
現状では商用RDBMSが利用率でトップを占めている。安定的にトップであるということは満足度も高いことがうかがえる。同調査では、機能や性能、開発のしやすさ、サポートの質など10項目で満足度を調べているが、製品価格とサポート価格だけは他の項目と異なり、満足度が低い。
製品の継続利用についての調査結果をみると、「今後も現在の製品を継続して利用する予定である」という回答は76.9%と多数を占めており、「他の製品へのリプレースを考えている」は16.2%で少数であった。ご存じのようにDBMS製品のリプレースは、単純ではなく、アプリケーションの変更までも必要となるので、ハードルが高い作業であるので、簡単にはリプレースできない。それでも、リプレースを望む企業は存在している。その理由を見ると、やはりサポートやライセンスコストを挙げる声が高い。いま商用RDBMSに不満があるとしたら、多くはコストなのだ。
データベース管理製品に関して方向性を聞いてみると(複数回答)、「オープンソース製品を増やす」(40.2%)、パブリッククラウドでの利用を増やす(DBaaSの利用)」(33.3%)などが上位に並ぶ。かつて企業システムで定番だった「オンプレミスで商用RDBMS」は徐々に変わろうとしている。
データベース管理製品に対する投資の増減は今後どうか。53.8%という半数以上が「横ばい」。残りの約1/3が「10%以上の増加」、約2/3が「10%未満の増加」とある。減少と回答した割合は4%未満であるので、全体で見れば増加傾向にあると言える。「増加」の割合が高いのは業種なら製造業、従業員規模なら多いほうが高い傾向にある。
データ管理製品に関する調査結果を全体で見ると、生熊氏は「RDBMSが主流であることに変わりはない」と断じる。ただしオープンソースRDBMSも着実に増えていて、もはや少数とは言えない状況だ。商用RDBMSに関しては価格面で満足度が低く、それがオープンソースやパブリッククラウドへのリプレースを考える主な理由となっている。また投資意欲で見ると、IT投資全体は「横ばい」に対してデータ管理製品は高い傾向にある。特に顧客管理や販売支援など売上向上に寄与する領域が高い。
今後IT部門はデータ管理にも深く関与していくべき
近年よく耳にする「デジタルイノベーション」について、生熊氏が背景をあらためて説明した。ビジネス環境はグローバル競争へと動き、業界構造や社会構造に変化があり、市場には飽和感やニーズの多様化がある。一方テクノロジーで見ると、モバイル、クラウド、ビッグデータ、IoT、AIなど新しい分野が急速に進化している。ビジネス環境の変化とテクノロジーの進化により、本業分野にイノベーションが期待されるようになっている。
これは新しいテクノロジーをもとに新規事業や新たな顧客価値を創出したり、ビジネスモデルを転換したり、異業種間連携を実現したりするなど、テクノロジーが本業そのものを変えるということだ。なかでも鍵となるのがデータである。センサーデータやネットにあるデータなどを収集し、蓄積し、分析し、活用することでデジタルイノベーションの実現へとつなげていく。
最後に生熊氏は「テクノロジーはデータと情報の価値を高めます。データを資源、情報を資産と認識し、積極的な管理と活用が求められています。データは全社で一括管理し、必要としている各部門へ分配し、分析を支援する組織が必要になってきます。IT部門は今後データ管理にも深く関与する必要があるでしょう。これまでのようにITインフラや業務アプリケーションの導入や管理だけではなく、データをセキュアに収集したり、データから得られた情報を該当する部署にフィードバックする役割も担うべきです」と提言して講演を締めくくった。