石井さんがPostgreSQLに出会ったころ
谷川:DB Onlineは立ち上げから5年が過ぎました。当初は2011年4月を予定していたところ、東日本大震災があり。しかしこんな時だからこそ新しいサイトを立ち上げようと、5月か6月にスタートしたのが始まりです。
当初、コンテンツを提供してくれる企業はオラクル、マイクロソフト、IBMくらいと予想していましたが、2011年くらいからビッグデータやNoSQLのキーワードが出てきて、コンテンツは苦労しないくらいになりました。OSS関連記事は人気があり、じわじわと長く読まれるのが特徴です。
今回はPostgreSQLに注目したイベントができるようになるほど、日本での盛り上がりを感じます。ここではPostgreSQLをよく知っている石井さんに公開インタビュー的にお話をおうかがいします。早速簡単に自己紹介をしていただけますか。
石井:SRA OSSの石井です。私はOSSの世界が長いですが、もともとのスタートは組み込み系プログラマーで、新入社員時にはアセンブラを学びました。コンピューターの基礎的なところから始められたのは幸運でした。PostgreSQLに出会ったのはだいぶ過ぎてからです。
谷川:PostgreSQLが「PostgreSQL」という名前になったのは96年でしたね。その頃もうPostgreSQLに関わっていましたか?
石井:実はPostgreSQLに出会ったのはPostgreSQLの前身でした。ハワイに赴任していた時、大学の研究プロジェクトに参加していて、大学でフリーで使えるソフトウェアを探しました。まだ当時OSSという言葉はありませんでした。見つけたのがUCB(カリフォルニア大学バークレー校)のプロジェクトでやっていたPostgresというものでした。
谷川:PostgreSQLの前身、Ingresの後継(Post)という意味でPostgresでしたね。当時石井さんはエンジニアとして使ったのですか?
石井:ハワイ大学の研究でソフトウェア解析をしながら、変わった構造のデータを溜めていました。そこでリポジトリを実装せよというお題がありまして、使いました。RDB上にオブジェクト指向のフレーバーをのせたような、グラフ指向でもあるような。
谷川:随分先進的ですね。いつごろですか?
石井:92年です。
谷川:帰国後はどうでしたか?
石井:日本でPostgres関心を持つ人たちから声をかけられて、94年ごろからPostgresのメーリングリストを始めました。
谷川:PostgreSQLが生まれる前からそのような活動があったんですね
石井:実はPostgresの後にPostgres95というのがありました。あとハワイ大学で使っていたPostgresはまだSQLではありませんでした。セマンティックス的にはほぼSQLでしたが、まだ文法が違っていました。SQLに対応したのはPostgres95からです。
谷川:メーリングリストを始めたときの規模感はどのくらいでしたか?
石井:ほんの数人でした。みんな初心者なので、情報交換をして盛り上がっていた記憶があります。参加者は大学も企業もいましたが、さすがにまだ実務で使われている方はいなかったと思います。
谷川:Postgresを使うきっかけとなったのは何でしたか?
石井:96年にPostgreSQLがリリースされました。いきなりバージョン6からでした。その後しばらく全く関係のない仕事をしていて、実際にPostgreSQLの仕事をするようになったのは99年からです。
谷川:何があったのですか?
石井:この年は私がPostgreSQLのコミッターになり、PostgreSQLの本を世に出し、日本PostgreSQLユーザ会が設立された年でもあります。メンバーは50人くらいでした。企業でそろそろ使われはじめたころでした。バージョンは6.5くらいです。
谷川:その時点でSRAがビジネスを始めたのは先見の明というか、チャレンジというか。
石井:両方ですが、チャレンジ、無謀に近かったのでは(笑