9の進化
谷川:9.xで性能が向上してきました。
石井:ハードウェアやLinuxの進歩と歩調があってきたところだと思います。話が戻りますが、PostgreSQLが日本で普及したもう一つの要因にPC Linuxがありました。一部のマニアだけとはいえ、Unixベースの開発が個人でも手に入ったというのは大きかったと思います。実際に私の最初の本もPC Unixというキーワードがタイトルにありました。
9.0以降に話を戻すとサーバーでメニーコアが発達してきたというのが大きくて、その性能を生かそうとしました。
谷川:商用DBからの移行は8.xころからですか?
石井:商用DBからの移行案件はまだ少なくて、新規プロジェクトで「オープンソースで行きましょう」と考えらるようになったのがはじまりです。まずは移行ですと、情報系からオープンソースへの切り替えが始まりました。
谷川:9の進化は石井さんから見て頼もしい感じですか?
石井:ええ、もう。頼もしすぎてついていけないくらいです。新しい開発者が増えてきたのも大きいと思います。特に新しいアイディアを持ち込む人が増えて、これはもう若さだと思います。失敗を恐れないと言うか、これまで「これを作るのにどれだけ大変か」と躊躇してきたのに、馬力で乗り切ってしまったり。
谷川:OSSらしい。日本ではPGEConsが一つの転機かと思います。石井さんも設立に関わっていますが、存在感はいかがですか。個人的にはベンダーやディストリビューターが寄り集まってもアウトプットなんて出ないのではないかと発足時に思いましたが、実際見事に覆してくれました。
石井:企業の連合体ですが、意識の高い人たちが集まってくれました。会社同士なので当然競争はありますが、それ以外で手を結べるところはあるだろうと考え、まずは検証から始めました。多大な労力を費やして、今では膨大なレポートとなりました。
谷川:毎年取材させていただいて、技術的には僕はもうついていけないくらいです。そろそろ次のステップを目指す時期に来たのかなと思っています。
石井:その通りです。次のステップとしてはどうやったら開発コミュニティにフィードバックをしていけるか。それで2016年度からはコミュニティリレーション部会を設立しまして、私が初代の部会長になりました。開発コミュニティフィードバックできる活動を目指しています。
谷川:日本のビジネスユース的な要望を本体にフィードバックをしていくというイメージですか?
石井:それも1つです。ゆくゆくはPGEConsか参加企業の名前で、もっと日本から開発者を出すことに結びつけていきたいです。オープンソースはコミュニティの人間が作っている社会です。どの国の人が作っていようと問題ないのですが、やはり人間なので頑張って作っている人間がどこに住んでいるかは気になります。日本の発言力を高めるためには汗をかいていかないといけないと思っています。
谷川:ちょっと世界に目を向けておうかがいします。世界で最も多く動いているデータベースはMySQLと言われています。一方、日本企業が使うデータベースと考えると、PostgreSQLが有力な選択肢になるという認識で間違ってないですよね。
石井:商用データベースだと代表的なのはオラクル。そことの機能比較でみるとPostgreSQLがMySQLより近いので移行する時に楽だと言われています。
谷川:ただ日本でPostgreSQLが多く使われているのは世界から見ると特異でしょうか。
石井:昔はPostgreSQLで盛り上がっているのは日本だけでしたが、今はそんなことなくて。日本はもっと頑張らないといけないかなという気がしています。
谷川:追い越された感がありますか。
石井:そうですね、嬉しい悲鳴です。