IT市場動向から浮かび上がる現状
まずはいま、企業IT市場はどうなっているのかを調査結果から紐解いていこう。ITRは長らく「IT投資動向調査」を続けている。IT予算を金額だけで見ると企業規模に影響されるため、企業の売上高に占める比率で経年変化を見ていく。これでITへの投資動向がつかめる。
調査開始年となる2001年度は1.3%。その後2006年度まで増加を続けて3.2%に届いた。以降は多少の変動はあるものの、おおよそ3%前後で推移している。ただし新規投資で見ると低下傾向だ。
将来はどうか。同調査から「次年度に最重要視するIT戦略上のテーマ」を見ると、上位5項目は前年と同じ。1位から順に「売上増大への直接的な貢献」、「業務コストの削減」、「顧客サービスの質的な向上」、「ITコストの削減」、「システムの性能や信頼性の向上」となる。かつてITは無理無駄を減らし生産性を向上させるなど、間接的に経営を支えるものだったのに対して、近年ではトップが示すように「売上増大への直接的な貢献」と変わりつつある。つまりITそのものがビジネスであり、経営に直結しているということ。最近、よく言われる「デジタルイノベーション」や「デジタルトランスフォーメーション」がまさにそうだ。
より具体的なIT動向を示す項目で重要度と伸び率を見てみよう。重要度の上位3つは「IT基盤の統合・再構築」、「ビジネスプロセスの可視化・最適化」、「マイナンバー制度への対応」とある。上位2つは重要度としては高いものの、伸び率は低い。一方、3位のマイナンバーは際だって高いものの、一時的な特殊事情と考えていいだろう。伸び率のトップには重要度で3位のマイナンバーがあり(一時的な特殊事情)、以降は「IoTのビジネス活用」、「APIによるシステム連携」、「アジャイル・ソフトウェア開発の導入」などデジタルイノベーションやデジタルトランスフォーメーションに関係する項目が並ぶ。
IT予算は横ばいであるのに対し、データ流通量は増加の一途にある。総務省「ビッグデータの流通量の推計及びビッグデータの活用実績に関する調査研究」(平成27年)によると、データの流通量は9年で9.3倍も増加している。流通しているデータを種別で見ると、最も増加しているのは動画やセンサーデータなどIoT関連の非構造化データが上位を占めるものの、顧客データや経理データといった既存のITシステムで利用している構造化データも4倍程度増加している。つまり、種類に限らず全般的にデータ流量が増加していると言える。
ここまでの調査結果から分かるポイントは、IT予算は横ばい、新規投資になると低下気味、なのにデータは増加の一途。背景には、依然としてコスト抑制圧力が高いことがある。コストの妥当性や投資効果の説明が難しいことと、経営者にIT投資が理解されないことがある。その一方、ITの利用範囲が拡大かつ高度化しているため、ITが経営に与えるリスクは増えているという側面もある。加えてデータが増加している点を考えると、データベースに求められる性能や機能は高まっている。