
IoTの話題に触れない日はない。先進的な企業による事例がすでにいくつか登場しているが、まだまだ一般企業でIoTを活用しビジネスを拡大した事例は少ない。あらゆるものがつながるようになっても、製造業など自社でもの作りをしていなければセンサーなどを組み込み、つなぐための通信の仕組みを搭載するのは容易ではない。
もの作り企業でも新規開発製品ならまだしも、すでに市場に出回っている製品に後からIoTのための機能を加えるのはむずかしい。そもそも単に「つなぐ」だけで何か新しいビジネスが生まれるわけではない。目的はつなぐことではなく、新たなビジネス領域を開拓すること。そのための手段の1つがIoTであることを忘れてはならない。
映像や音声データはものにセンサーを付けずに取得できる
ところで、後からセンサーを付けるのはむずかしいが、外付けや後付けでもさまざまなデータを取得する方法がある。カメラによる映像データの取得やマイクによる音声データの取得もその1つだろう。先日開催された「TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2016」で、面白い映像データ活用の展示が行われていた。それが人の顔の動画を撮影し、そこから心拍数を測定するというもの。
人の顔表面の色は心拍により常に変化している。つまり、人の顔の映像から画素単位で色の変化を検知すれば、心拍数を測定できるのだ。このデータと顔認識技術などを組み合わせれば、店舗窓口を訪れた人を識別し、顧客情報として来店時の感情や気分まで記録し、データ分析して最適な接客対応への利用も可能だろう。
他にも高解像度の動画を、センサー代わりにする試みがある。設備機器などの振動を検知するために専用センサーを組み込むのではなく、4Kなどの高解像度動画を撮影する。正常時と異常時の振動の映像を機械学習で認識できるようにすれば、映像ストリーミングデータを解析するころで異常振動をリアルタイムに検知できるのだ。
また音のデータを使い、人の行動を検知することも可能だ。生活音のデータを分析し学習すれば、音から人がどんな行動をしているかを把握できる。マイクを複数設置すれば人がどこで何をしているかも分かるだろう。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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