日本ではファーウェイと言っても、まだ認知度が高いとは言えないため、少しファーウェイについて補足しておこう。ファーウェイ社の2016年度の決算は、売上高は約8兆7,316億円、純利益は約6,211億円という状況となっており、事業の約6割が通信事業者向けネットワーク事業、約3割がスマートフォン等のコンシューマ向け端末事業、残り1割が法人向けICTソリューション事業で構成されている。同社のソリューションは主に通信キャリア向けのビジネスが大半を占めており、ファーウェイのサービスは間接的に35億人の「ユーザが繋がる」ことに利用されている。
IoTの分野でも成功を収めており、スマートシティソリューションを世界40ヶ国100都市に展開し、スマートグリッドにおいても65ヶ国170以上の事業者に同社の技術が採用されている。アジアを代表するグローバルICTカンパニーであり、モバイル領域では最も影響力のある企業の1つであるため、同社のイベントには世界中のメディアが参加する。なお、本イベントでは世界27ヶ国230人の記者が参加していた。これほど世界各国から注目を集めることが出来るメーカは世界でも数える程しか無いだろう。
ファーウェイのこれから一年の方向性が示されるHuawei Connect 2017では、同社の注力領域「クラウド分野」について戦略と実績が語られた。
世界5大クラウドになることを宣言
初日の基調講演ではファーウェイ 取締役副会長兼輪番CEO 郭平(グォ・ピン)氏から、「Grow with the Cloud:Enabling an Intelligent World」と題して、同社のクラウド戦略全般が語られた。
郭氏は、トーマス・J・ワトソン氏が1943年に語ったとされる「恐らく世界中のコンピュータ市場の規模は、5台だろう」という言葉を引用し、「この予言は現実のものとならなかったが、クラウドの世界では本当になるかもしれない。世界のパブリック・クラウドは五つに集約され、我々はその1つになる」と宣言した。
「こういった宣言に対して、世界は誰も本気にしないかもしれないが、1994年、レン・ツェンフェイによってファーウェイが設立された当初、"世界の通信業界において我々が重要な役割を持つ"と話しても誰も耳を貸さなかったが、今では通信業界において様々な革新をもたらしている」と続けた。
とはいえ、パブリッククラウド市場は上位ベンダーへの集中が進んでおり、ガートナーが「2019年にはネイティブクラウドのIaaS事業者の90%が市場から追い出される」とのレポートを発表するほど厳しい市場だ。かつ、同社の主要な収益源はスマートフォン等のコンシューマ事業と、ネットワーク機器の法人事業が大半である。一見すると無謀な挑戦のようにも見えるが、ファーウェイがどこまでクラウド事業に本気なのか?この市場の疑問に応えるため、ファーウェイは今年3月にクラウドBUを起ち上げ、既に2,000名を超える体制を構築し、パブリッククラウドの拡販を推進していることを明らかにした。