次期バージョンのOracle Database 18cで実現する自律型データベース・クラウドサービス
例年通りイベント初日夕方に行われた会長兼CTOのラリー・エリソン氏のオープニング基調講演では、新しいデータベースの話題が中心となった。それが世界初の自律型(Autonomous)データベース・クラウドサービスの発表であり、これは次期バージョンのデータベースとなるOracle Database 18cによって構成されるものとなる。ちなみに現行バージョンのOracle Database 12cは、13以降の番号を一気に飛び越え、2018年度にOracle Database 18cと名称変更がなされる。
基調講演で最初にエリソン氏が触れたのは、サイバーセキュリティの話題だ。サイバーセキュリティにおいて、大きな脅威とはデータが盗まれること。今やどこにデータを置いていても、さまざまな攻撃を受けることになる。そんな中でデータをもっとも安全に保管できるのは、Oracle Databaseにデータを保存することだとエリソン氏は言う。
脅威はどんどん新しくなっており、新しい攻撃を防ぐためにパッチを作っても、それを適用する前に攻撃されてしまうかもしれない。パッチをいち早く作っても、スケジュールを立てそれを当てるためのダウンタイムを予定してから適用するとなると、待ち時間に新たな攻撃にさらされるかもしれないのだ。そこでOracleでは、人を介さずに自動でパッチを当て脅威から守る。
「セキュリティを確保するには、自動化することが必要です。脅威が検知されたらそれに対するパッチをすぐに発行し、人手を介さずに適用するのです。その際には、システムをシャットダウンするのもよくありません」(エリソン氏)
この一連の自律型の処理をクラウド上で実現するのが、新しいOracle Database 18cだ。自律型の処理のためには、AIの機械学習技術を採用する。システムにはハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどさまざまなログがあり、さらにデータベースには誰がいつどこからどんなクエリーを発行したかなどの詳細な情報も蓄積される。これらを機械学習にかけ分析することで、異常なデータへのアクセスが何かを把握できるようになる。さらに異常だけではなく正常な状態も認識し、使い続けて行く間にデータベースのサイズが大きくなるなどの変化があっても継続的にチューニングを行い確実に異常を識別できるようになる。
「これは他のデータベース・サービスにはできないことであり、とても素晴らしいことです。この機械学習の技術を活用することで、100%自律化したデータベース・サービスの運用ができるようになります」(エリソン氏)
人の介在を廃したOracleの自律型データベース・クラウドでは、99.995%の稼働率をSLA(Service Level Agreement)で補償する。これは年間で30分未満のダウンタイムを補償することであり、この場合のダウンタイムには予定ダウンタイムも予定外ダウンタイムの時間も含まれる。
「これには例外条件はなく、結果的にAmazon Web Servicesよりも100倍は信頼性が高いものになります」とエリソン氏は主張する。そしてAWSのSLAには、ダウンタイム時間の対象とならない例外条件が多すぎるとも指摘する。
まずは年内にデータウェア向けのAutonomous Database Cloudのサービスが提供される予定だ。これは自動のプロビジョニングによる拡張が可能で、アップグレード、パッチの適用、チューニングなどを行う際にもシステムを落とさず、かつ人手を介さずに自動で作業は実施される。つまりヒューマンエラーなども発生しないことになる。さらに、必要最小限のリソースで運用できるようになっており「AWSのRedshiftよりも半額以下で運用できることを、契約書に明記します。これはその自身があるから言えることです」とも言う。Autonomous Database Cloudでは、先日発表されたBYOライセンスも適用可能で、インフラとしてはExadata Cloudのサービスも利用できる。