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(第11回)  インサイトを知るための「現場調査」で重要なこと

  2013/09/30 08:00

前回の記事では、ユーザーのニーズに焦点を当て、言語化が難しいインサイトやエクストリーム・ユーザーについて言及した。今回は、現場での調査方法である「観察」、「インタビュー」、「没入」の3つを紹介し、特に「観察」の方法や注意点について取り上げる。なお、現場で記録を取る際の練習ができるワークシートも添付している。

現場における3つの調査方法-観察、インタビュー、没入

 インサイトの獲得には現場調査が欠かせない。現場ではユーザーを「日常生活の専門家」として見ることが重要だ。一般的な考えでは、組織側の人間が製品やサービスの「専門家」、ユーザーが「消費者」だ。しかし、この発想では組織やプロダクトの都合にユーザーを当てはめるだけの恐れがある。人間中心の発想でユーザーの満たされないニーズを明らかにすることで、イノベーションにつながる新たな機会を見出すことができる。

図1:イノベーション実現に向けた3つのステップ

 現場調査には常に客観性が求められるが、客観性を追求するために3通りの方法がある。「観察」、「インタビュー」、「没入」だ。

 1つ目の「観察」では最も傍観的に調査を行い、ユーザーと直接関わることなく第三者として行動を把握する。仮に観察対象が「バスを利用する子連れの夫婦」であれば「誰が最初に乗り始めるか」「運賃の支払い方法は何か」といった内容の詳細を見ていくことになる。

図2:現場における3つの調査方法

 2つ目の「インタビュー」は、ユーザーの声をそのまま受け止めるという点では傍観的、自分自身がユーザーと直接関わるという点では参加型の調査方法だ。事前にいくつか質問項目を用意してストーリーを考えたうえで、相手に寄り添い共感しながら話を聞いていく。

 3つ目の「没入」は参加型の調査方法となる。自分自身がユーザーとなり、対象商品やサービスの「利用者」としてその場に浸りきる。携帯電話のような製品を開発しているのであれば、既存製品や他社の類似商品を何日も使い続ける。飲食店のようなサービスであれば、サラリーマンやOLになりきって平日のランチに必ず該当店舗を利用する。

 これにより、たとえば「混雑時に1人で1品しか注文していないときの『ご注文を繰り返させていただきます』という対応は不要ではないか?」といった疑問点や改善点が見えてくる。ユーザーになりきることで、製品やサービスの繊細な部分に気付くセンスが養われていく。それにより、前回の記事で紹介したインサイトのような言語化されない問題点を体感できるようになるのだ。

 以上3つの調査方法があるが、「どうやって観察を行うか」については最もイメージしにくいのではないだろうか。次ページから、観察の手順、記録のコツ、現場での立ち振舞について順に紹介したい。

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著者プロフィール

  • 柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

    岡山県出身。専門はイノベーション・プロセス。スタンフォード大学d.schoolでイノベーション手法:デザイン思考を学ぶ。同大学発行の『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』監訳など、デザイン思考関連教材は公開6ヶ月でダウンロード5万件。岡山大学大学院で3年間教鞭を執った後、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)を拠点にイノベーション教育の研究と実践に専念。デザイン思考を活用したワークショップ開催や企業向けの教育プログラム開発・研修を行う。一般社団法人デザイン思考研究所代表理事所長。 ・個人サイト http://kashinotakanori.com/   【一般社団法人デザイン思考研究所】 イノベーションの研究と実践を通じ、世界に向けて新たな社会の潮流を創り出すための組織。イノベーション・ツールの1つ「デザイン思考」の普及活動に取り組む。スタンフォード大学d.school発行の『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』等、翻訳編集した関連教材は公開6ヶ月でダウンロード5万件超。イノベーション実践のためのワークショップ開催や、企業向けのイノベーション教育プログラムを提供。対象はベンチャー企業や上場企業、非営利法人など幅広い。10年後の社会を見据える組織と人のために、質の高い学習環境を提供することを目標とする。 【無料教材】 『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』 【Facebookページ】 一般社団法人デザイン思考研究所 Facebookページ

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