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第14回 企業を襲う相次ぐサイバー攻撃、本当に海外のクラウドで大丈夫なのか?―再浮上するカントリーリスクへの懸念

  2011/06/17 07:00

有事の際のリスクをどう捉えればいいのか?

 新しく設立される会社は韓国籍になるため、日本から見た場合は、親会社からの影響力とガバナンスがどうなるかという読み切れない事項が出てくるものの、基本としては新会社がサービス提供主体、ソフトバンクは販売代理店的な立場になると考えられる。よって、サービス提供主体を軸で考えると何かあった際は、韓国の定めたルールをベースとして物事が動いていく可能性が少なからずあると捉えていた方が良い。

 さて、そうなると気になるのが韓国は、情報管理や権利保護に関してどのような制度を保有しているかという点である。結論から言えば、どうもまだ十分には整備されていないというのが実情である。現在、韓国では国を挙げてクラウド推進のアクションを取っている最中だが、2014年を目標として2009年2月に発表した「クラウド・コンピューティング活性化総合計画」においても、利用者の権利保護等のための法制整備が進んでいないことなどが指摘されており、黙々とルール整備も含めて遂行中とのステータスとなっている。

 とはいえ、プライバシー情報の取り扱いや国家間での商取引データの移転といった課題については、各国まさに検討を進めている段階であり、立ち位置が定まってない国は決して少なくない。韓国が特別に遅れている状態にあるということではない。それこそ、大規模化の進むクラウドをどの程度法で縛るのが妥当かといった問いかけにスタンダードな回答はまだないと言える。日本でも内閣府、総務省、経産省と主要どころが揃って普及推進や関連法の整備を進めている状況にある。

 韓国の動きに戻ると、少々細かい話となってしまうが、法制度改善の実施期間が2010年から2014年、クラウド・コンピューティングに関わる政策協議会が2010年から後ろの定めなしと、2011年現時点はまさに中身を詰めている真っ最中である。

 以上の政府動向を踏まえて、冒頭の「データは保護されるの?」との要約文を平文展開してみると次のようになるだろう。 「サービス提供会社の所在地である韓国政府のクラウド・コンピューティングに関わる制度検討は、まさに今進んでいるところなので固まったルールがない。つまり、暫定的な運用解はあったとしても当面こうなると確実に言えるものなのだろうか」。

 おそらく、検閲的なモニタリングや規制当局の強制的なデータの閲覧差し押さえなど、強権的な姿勢が前面に押し出されることはないと個人的には推測している。しかし、はっきりした根拠がある訳ではない。よって、「まだ良く分からない」と回答するのが正しいものと思われる。

 もちろん、ソフトバンクおよびKTがデータを後ろから漏らすことを最初から意図してサービス提供しようとしているのではないだろう。上記で整理したのは、あくまで有事のリスクをどう捉えるかといったものであり、韓国政府やKTが悪徳プレイヤーであると暗に断じたい訳ではない。普通に使う分には、特段の問題が出るようなものではない。海外のクラウド事業者やデータセンターサービスでは、こういった問題が常に付きまとっているというのが基本理解であるのと、韓国は立ち位置が定まっていないので、まだなんとも言えない側面が残っているというのがリーガルリスクを考える際の基本ポイントである。

 本ニュースとまるで期を合わせたのごとく出てきた事案で気になっているのが、最近、世界各所で起きている企業システムへのネットワーク侵入のニュースである。ソニーがハッカーコミュニティといざこざになってしまったというのが事の発端になっているが、ソニー関係各社から飛び火する形でIMFもサイバー攻撃を受けるなど、ちょっとした社会問題となっている。

 自然災害など、万一何かあった際の事故的リスクだけ考えていれば果たしていいものだろうか、という追加懸念が浮かんでくる。(次ページへ続く


著者プロフィール

  • 渡辺聡(ワタナベ サトシ)

    神戸大学法学部(行政学・法社会学専攻)卒。NECソフトを経てインターネットビジネスの世界へ。独立後、個人事務所を設立を経て、08年にクロサカタツヤ氏と共同で株式会社企(くわだて)を設立。現同社代表取締役。大手事業会社からインターネット企業までの事業戦略、経営の立て直し、テクノロジー課題の解決、マーケティング全般の見直しなど幅広くコンサルティングサービスを提供している。主な著書・監修に『マーケティング2.0』『アルファブロガー』(ともに翔泳社)など多数。 Twitter:http://twitter.com/swmemo 企社Facebook:http://www.facebook.com/kuwadate

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