ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は、世界のCIOを対象に実施した、2021年のCIOアジェンダ・サーベイの結果を発表した。
日本企業のデジタル化は着実に進んでいる
本調査の結果から、世界の企業の中でデジタル・ビジネス・トランスフォーメーションが「成熟」段階にある割合は、2018年の33%から2020年の調査時には48%へと増加したことが判明した。一方、「成熟」段階にある日本企業の割合は、2018年の23%から2020年には37%へと上昇しているという。
バイス プレジデントでガートナー フェローの藤原恒夫氏は、「2018年の時点では、日本企業はデジタル化の成熟という面で世界に約10ポイントの後れを取っており、2020年も10ポイント程度の後れを取っています。しかしこれは、日本企業が世界の企業のペースに追随している表れと言うこともできます。この最大の理由として、日本企業が調査時までに受けた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの衝撃が比較的小さかったことと、デジタル化への着実な投資によって成熟度を改善できたことが挙げられます。一方で、『デジタル・イニシアティブなし』と回答した割合が世界の平均の14%に対し、日本企業の割合は19%と高い割合になっている点は懸念材料です。ただ、2021年には日本政府によるデジタル庁構想の進展や行政のデジタル化の取り組みが見込まれることから、これらが日本企業のデジタル化の加速につながる要因となるでしょう」と述べている。
日本企業は、世界のトレンド・ラインより約2年の後れを取っている
本調査では、「デジタル由来の売り上げ」と「デジタル化されたプロセス」の両方の割合を比較した。それによると、日本企業は現時点で、全業界において、世界のトレンド・ラインより約2年の後れを取っていることも明らかになったとしている。
世界と日本の企業におけるテクノロジ投資の優先順位には明らかな違いが生じている
また調査の中では、各テクノロジ領域における投資の増減についても尋ねている。調査対象となった世界のCIOは、サイバーセキュリティ/情報セキュリティ(61%)、ビジネス・インテリジェンス/データ・アナリティクス(58%)、クラウド・サービス/ソリューション(53%)の順で投資を増やすと回答している。一方、日本の企業のCIOは、クラウド・サービス/ソリューション(60%)への投資を増やすと回答した割合が一番多く、続いて基幹システムの改良/刷新(59%)、サイバーセキュリティ/情報セキュリティ(57%)を挙げている。
テクノロジ投資の動向について、日本企業のCIOと世界のCIOには明らかな違いが見られるという。1つ目は、日本企業のCIOは「基幹システムの改良/刷新」への投資を重視している点。日本企業のCIOの59%が投資を増やすと回答しているのに対し、世界での割合はわずか36%であり、10%は削減すると回答している。2つ目の違いは、「ビジネス・インテリジェンス/データ・アナリティクス」への投資である。世界の企業のCIOの58%は同領域への投資を増やし、投資増加領域として第2位となっている一方、日本企業のCIOはわずか48%しか同領域への投資を増やさず、投資増加領域として第5位にとどまっているとしている。
藤原氏は「基幹システムの改良/刷新への投資については、海外の先進企業は投資を減らし、塩漬けにする傾向にあります。一方で日本企業においての基幹システムの改良/刷新は、カスタマイズの削減とビジネス・プロセスの一層の標準化と自動化によって業務負荷を軽減できるため、むしろこれらを検討すべきです。ビジネス・インテリジェンス/データ・アナリティクスへの投資については、デジタル化が加速している今こそデータ主導型の経営を働き掛ける良い機会となるでしょう」と述べている。
デジタル・ビジネスをより速く進展させ、グローバル環境における自社の競争力を高めたいと考えている日本企業のCIOは、以下の3つのアクションを実行すべきだとしている。
- 自社の製品/サービスへのフィードバックを継続的に求めることで、より積極的かつ直接的に社外の顧客に関与する
- オペレーションの効率化、新たな収入源の創出、カスタマー・エクスペリエンスの向上を目的としたテクノロジ・ソリューションを提案することで、弾力性(レジリエンス)と比較的反脆弱性(アンチフラジリティ)がある状態の達成を支援する(「比較的反脆弱性がある状態」とは、混乱の中でも競合他社より優れたパフォーマンスを上げられる態勢にあることを意味する)
- ITのリーダーシップを多様性と組織文化の変革に集中させてデジタル・ビジネス・トランスフォーメーションを加速させ、ポジティブ・フィードバックを提供することで、さらに前向きな職場環境をもたらす
藤原は次のように述べている。「IT部門は、Web会議やリモートワークの実現など、パンデミック中の業務継続への貢献が評価され、社内での立ち位置が上がりました。日本のCIOやIT部門には、これを糧にデジタル化の加速で一気に、次の世代になくてはならない存在、もしくは企業の将来に貢献する有能人材を輩出する部門としての地位を確立することを目指してほしいと思います」。
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