日立製作所(以下、日立)は、上下水道事業クラウドサービス「O&M(Operation & Maintenance)支援デジタルソリューション」のラインアップに、AIを活用した設備診断、水質予測、運転支援の新機能を拡充したことを発表した。
追加機能の概要・特長
(1)設備状態診断機能
ポンプやブロワなどの設備の運転データを収集し、AIの一種のデータクラスタリング技術であるART(適応共鳴理論)手法を用いて、過去の正常な設備の運転データを事前学習させることで、予兆診断の基準となるデータの相関関係を分類し、正常データのカテゴリーを自動生成。その上で、実際の設備運転時に取得した新規データを自動分類し、正常カテゴリーと比較することにより、運転状態が正常かどうかを診断するという。
これにより、不具合などの状態変化を早い段階で捉えるコンディション・ベースド・メンテナンスが可能となり、大規模な故障にともなう損失コストの抑制や、整備間隔の延長などによる保全コスト縮減に貢献するとしている。
取水、配水設備を対象に本機能の実証試験を行い、取水ポンプや配水ポンプの運転状態の変化の検知が可能となることを確認。この実証試験を実施した浄水場では、診断結果を日常点検に反映し、診断によって点検を強化するポイントを変える運用を行っているという。
(2)水質予測機能
ディープラーニング技術を用いて、過去の運転実績データと環境条件(天候・水源)などのオープンデータを学習データとして予測モデルを構築し、予測結果を逐次提示。数時間先の原水の状態や処理水の水質を予測することで、良好な水質を得るための客観的で適切な運転条件設定を支援することが可能だとしている。
本機能の実証実験を行い、降雨や渇水の際に、監視システムに併設された端末から原水濁度や電気伝導率の予測値を表示し、それに基づいて取水運転の調整や薬品注入を決定するための判断材料として活用できることを確認しているという。
(3)プラント運転支援機能
強化学習技術や統計解析により、運転員の知識や設備運用条件などのノウハウ・判断を学習し、学習した条件に基づいて将来の需要予測や運転計画を提案することで、運転員の業務を支援する。これにより、業務の標準化、熟練者のノウハウ・技能継承を支援することが可能になるという。
配水ポンプの運用を対象に本機能の実証実験を行い、水量、水圧や配水池水位の許容範囲、所定時刻での目標値などの条件を学習させることで、24時間後までのポンプやバルブ等の操作時刻と操作量のガイダンスを表示。それに基づいて操作を行うことで、適切な運用が可能となることを確認したとしている。
(4)データ見える化機能
クラウドに集約した監視・点検データに加え、これらを組み合わせて運転管理や保全に有用な指標を算出するという。本機能によって、最新データの検索・トレンド表示・ダウンロードをスピーディーに実行できるとしている。
本機能の実証試験を行い、河川データを含めて見える化を進め、報告書の作成や可視化された設備の稼働状況を参考として運転条件の検討などで利用できることを確認しているという。
(5)残塩管理機能(2021年中に提供開始予定)
配水池や給水栓における残塩の目標値を満足させるための塩素剤の注入率推奨値を反応モデルと塩素注入率や水温などのデータを用いて算出し、プラント運用条件に反映することで、適切な水質での安定供給を支援する。
浄水場の急速ろ過、緩速ろ過設備において実証試験を行い、本機能を用いることで平常時の残塩管理支援として有用であることを検証。現在、提供に向けて準備を進めているという。
今後日立は、今回追加した機能を含めた本サービスを、先進的なデジタル技術を活用したLumadaソリューションとして、上下水道事業体などに提供するとしている。
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