三菱総研DCS(以下、DCS)は、中島合金と、熟練技能者の暗黙知を学習させたAIが実業務に適用可能か検証するため、純銅鋳造の製造工程で実証実験を行い、その結果を発表した。
純銅鋳物にはJIS規格が定められており、品質を一定水準に揃える必要があるという。しかし、実際は製造者でも制御できない因子もあるため、中島合金では調整用の添加剤を適量投入することで最終品質を均一化する熟練の技能を持っている。同社はこの技能の継承には人伝いによる多くの手間と長い時間がかかるとして、AIを活用した検証に着手した。
実証実験では、実際に純銅鋳造を行い、添加剤の投入量に関してAIの予測と熟練者の判断を比較。熟練者は、AIの予測値に問題がないと判断した場合、AIの予測値通りに添加剤を投入するという。AIの予測値が採用された場合、その妥当性の評価にあたり、製品としてJIS規格を満たし、かつ最終品質が安定しやすい理想的な導電率にどれだけ近いかを確認した。
実験結果
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AI予測値の妥当性
AIの予測値は、全14回の製造中13回で採用され、いずれの回もJIS規格を達成。導電率の実現値と理想値との絶対誤差も熟練者と同等水準だったという -
業務への適合性/使いやすさ
実務への適合度は「予測処理の操作性」「予測処理時間」の2点を主な検証ポイントとした。熟練者にすぐに使い方を覚えてもらえたうえに、「自分が判断するよりずっと早い」と言ってもらえ、実務でも十分に活用できる水準だとしている
DCSは、実証実験により予測機能の実用性は十分に確認できたとして、UX面を中心に改良を続け、学習支援機能の強化を進めていくという。また、今回の添加剤の投入量の調整以外にも、企業の製造過程で「状態、状況に応じて製造条件を調整する」ケースは多いと考え、実用化に向けて、事例を蓄積するとともに技能継承を支援していくとしている。
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