ワークポートは、全国の企業の人事担当者117人(従業員数100名以下~5000名以上の企業)を対象に、デジタル人材の採用に関する実態や取り組み、抱えている課題など、「デジタル人材の採用」に関するアンケート調査を実施し、その結果を発表した。
調査結果について、同社は以下のように述べている。
【デジタル人材の充足度】82.1%がデジタル人材が不足していると回答 充足している企業は17.9%のみ
企業のDX化などが加速し、経産省の試算によると「2030年にはIT人材が最大79万人不足する」といわれる中で、企業はデジタル人材の確保にどのような課題を抱えているのだろうか。対象者全員にデジタル人材が充足しているか聞いたところ、「大幅に不足している」が40.2%、「やや不足している」が41.9%と、「不足している」と回答した企業が82.1%に上り、「充足している」と回答した企業は17.9%に留まった。
【デジタル人材採用の課題】69.2%が課題を認識 応募者不足・スキルのミスマッチ・待遇面の改善余地
デジタル人材採用に課題を感じているか聞いたところ、大半を占める69.2%が「課題がある」と回答した。
「課題がある」と回答した人事担当者に具体的な課題の内容を聞いたところ、候補者数の不足などで、思うように応募者が集まらないという意見が多く挙げられた。デジタル人材の母数の少なさゆえの競合他社との人材獲得競争の激化も、採用を困難にしている要因であると考える企業も多いようだ。また、「スキルの高いエンジニアが求める年収や働き方を提示できない」(システム開発・情報通信)など、売り手市場が続く中で待遇面に改善の余地があると考える企業もあった。
地方企業の人事担当者からは「優秀な人材が都市部に流れていく」(システム開発・情報通信)、「九州に人材が少ない。東京から引っ張ってきても報酬が合わない」(WEBサービス・広告・コンテンツ制作)など、都市部への人材集中により、地方での採用が困難になっているという意見が挙がった。また、「自社で希望するスキルを保有する人材が不足している」(システム開発・情報通信)、「コミュニケーション能力に長けた候補者がいない」(商社)などの意見も多く、一口に「デジタル人材」といっても、高度な業務を任せるために高いスキルや経験値を求めるからこそ、採用がシビアな状況に陥ってしまうということがうかがえる。
【デジタル人材定着の取り組み】定着化に取り組む企業は約4割のみ
続いて、対象者全員に採用したデジタル人材定着のために取り組んでいることがあるか聞いたところ、「取り組んでいる」と回答した企業は39.3%のみだった。デジタル人材が不足し、採用に積極的な一方で、デジタル人材の定着化のために特別な取り組みを行っている企業は少ないという現状がわかった。
「デジタル人材の定着化に取り組んでいる」と回答した人事担当者に具体的な取り組みを聞いたところ、「面談をして希望、現状の確認」(システム開発・情報通信)など定期的な個別ミーティングを実施して、個々の希望や不満をキャッチアップし、問題解決や改善に努めているという意見が多く挙がった。また、「時代に合わせた労働環境の整備(フリーアドレス、時短勤務、テレワーク、フレックスタイム制)」(システム開発・情報通信)、「申込制で年に1回の昇給・昇格試験(社歴が浅い社員でも昇給・昇格のチャンスあり)」(人材サービス・アウトソーシング)など、働く環境の整備や待遇面の充実を図ろうと努める企業も多いようだ。
【デジタル人材の育成】6割の企業が取り組みに前向き 社内外研修の充実化に注力
また、対象者全員にデジタル人材の育成に取り組んでいるか聞いたところ、35.9%が「取り組んでいる」、27.4%が「検討中」と回答。63.3%の企業が人材育成を視野に入れていることがわかった。
「デジタル人材の育成に取り組んでいる」と回答した人事担当者に具体的な取り組みを聞いたところ、定着化のための取り組みとして挙がった意見と同様、「社内研修を充実させ、外部研修の受講も自己負担なく各自自由にしている」(システム開発・情報通信)、「個々のスキル経験に応じた研修、OJTの用意」(システム開発・情報通信)など、社内外研修の充実化が挙がった。
企業のDX化推進にともない、デジタル人材の拡充に積極的に取り組む企業は多いものの、多くの企業は自社にマッチングする人材確保に苦戦していることがわかった。そもそもの人材不足問題も深刻化する中で、今後は人材の争奪戦が一層激化していくことが予測される。2021年に岸田文雄首相は、「3年間でデジタル人材育成に4000億円投じる」と表明しているが、企業においても今後は採用要件を十分に満たす人材を「探す」ところから、「育成」するということにも注力する動きが活発化していくのではないだろうか。
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