2024年4月24日、Tricentisは日本市場での事業戦略について記者発表会を開催した。
Tricentisはソフトウェア開発におけるテスト自動化を軸として事業展開している企業。既にグローバルで3,000社以上の導入実績があるとして、同社 アジア太平洋 シニア・バイスプレジデントを務めるDamien Wong氏は、「ソフトウェアテストにおける革新的なアプローチが求められており、我々はエンタープライズのニーズを満たすようなソリューションを提供している」と述べる。
「テストソリューションプラットフォーム」として、いくつかの製品からなるソリューション展開を行っており、インフラからアプリケーションまですべての工程をカバーできるとWong氏は自信を見せた。特に機械学習によるセルフヒーリングやリスク分析、生成AIによるテストケースの生成など、ソリューションにAIを活用することでSAPにおけるテスト工数の削減も確認できているという。
今回、同社は日本市場に本格参入することを発表し、DXが推進される中での迅速なソフトウェアリリースや品質改善、人材不足などの課題解消に寄与できると強調。同社 最高収益責任者 Ian Steward氏は、「今後5年間にわたり日本市場はフラグシップと言えるほどの投資を行っていく」と150億円に及ぶ売り上げ目標を強調した。
同社はSAPとのパートナーシップを締結する中、日本市場において、まずはSAP S/4HANAのマイグレーションにかかわる支援を行っていくという。具体的には、「SAP Enterprise Data Integrity Testing by Tricentis」「SAP Enterprise Performance Testing by Tricentis」「SAP Change Impact Analysis by Tricentis」「SAP Enterprise Continuous Testing by Tricentis」という4つのソリューションを軸として統合的にカバーしていく。テストケースの作成からメンテナンスを含め、カットオーバー後のテスト工程削減にも貢献できるとTricentis Japan 代表執行役 成塚歩氏は述べる。
既に伊藤忠商事が「Tosca(Accelerate & Automate Continuous Testing)」を導入しているとして、同社 准執行役員 IT・デジタル戦略部長の浦上善一郎氏が登壇。同社は1996年に北米拠点でSAPを導入して以来、これをベースとした「海外基幹システム(G-SAP)」を海外25ヵ国、40拠点に導入・展開しており、営業モジュール(SD/MM)を採用しつつも多くのモディフィケーション、アドオンで対応してきたという。
20年超にわたる追加対応により新規ビジネスプロセスやイノベーションへの対応が困難になったり、ERPとしてのリアルタイム性が失われたりなどの課題解消に向けてS/4 HANA Cloudへの刷新を推進。Fit to Standardを基本方針としてGreenfieldアプローチを採用することにより、3,000オブジェクトにわたるモディフィケーションを全撤廃し、アドオンプログラムも90%削減するなど標準化を徹底しているとした。
移行にともない、2年に1回のバージョンアップによる機能拡張の恩恵を享受できるよう、テスト自動化が重要な項目になるとして「Tosca」を採用したと浦上氏。「ベンダーに委託をせず、我々がPMとしてCTCなどの技術者を含めたワンチームで進めている。北米を皮切りにプロジェクトを進めており、欧州とアフリカへの展開が昨年度終わった。2025年には全拠点への展開を完了する見込みだ」と話す。
テスト工程では、これまで数人のテスト担当チームによる手動テストを実施していた中、負荷が増大し、各リリースにおいて最低でも180時間を要していたという。そこで抜本的な自動化、新旧SAP環境に対応できる拡張性、テスト自動化によるテスト品質の標準化などの要件を満たすToscaを選定したと説明。テスト実行時間を38%短縮し、総テスト工数を65%削減できたとした。将来的には、Tricentisが提供する他ソリューションの利用も検討していくとのことだ。