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保険業界の生成AI実態 9割の会社が投資意欲も、データ不足と保護・プライバシーが課題【SAS調査】

 SAS Instituteは、保険業界における生成AIの活用状況に関する調査『Your journey to a GenAI future: An insurer’s strategic path to success(生成AIの未来:保険会社の成功への戦略)』の結果を発表した。

 同調査は、SASとColeman Parks Researchによって行われた。保険業界の意思決定者236人を対象とし、世界各国の保険会社がどのように生成AIを導入し、予算編成し、戦略を立てているかを明らかにしているとのことだ。

 調査結果によると、9割の保険会社が、来年度に生成AIへの投資を予定していることが明らかに。なお、イノベーションの倫理面や規制面での影響が依然として多くの会社を悩ませていることも浮き彫りになっているという。

1. 保険会社は予算と戦略を重視して生成AI導入に積極的

 回答者の89%が2025年に生成AIへの投資を予定しており、そのうち92%が専用の予算を計上しているという。投資の主な目的は、以下の3つ。

  • 顧客満足度や顧客維持率の向上(81%、あらゆる業界の中で最も高い割合)
  • 営業費の削減や作業時間の短縮(76%)
  • リスク管理やコンプライアンス対策の強化(72%)

 68%の保険業界関係者は、既に週1回以上業務において何らかの形で生成AIを使用しており、5人に1人(22%)は毎日使用していると回答。また、回答者の11%が、従事する企業で生成AIを完全導入済みで、49%が既に導入を進めていると回答している。

2. 保険業界は他のどの業界よりも生成AIの倫理に対する懸念を表明

 保険業界の意思決定者は生成AIの倫理について、他業界の意思決定者に比べ、やや強い懸念を示しているという。保険業界の回答者の59%が、生成AIの倫理について懸念を示しており、他業界の平均52%を上回っているとのことだ。

 なお、倫理についてより深い懸念を示してはいるものの、倫理フレームワークの作成、導入および維持など、ガバナンスやモニタリングへの取り組みは未だ策定段階にとどまっているという。

  • 回答者のわずか5%が自組織の生成AIに関する倫理フレームワークが「包括的にしっかりと確立されている」と回答
  • 57%が「構築中」と回答
  • 27%が「場当たり的または形式化されていない」と回答
  • 11%が倫理フレームワークは「存在していない」と回答

 他の業界と同様、保険業界の専門家は自組織における最大の懸念事項として、データプライバシー(75%)とデータセキュリティ(73%)の問題を挙げているという。

3. データ不足への答えを模索する保険会社

 AI倫理に関する懸念を補完するのが、規制コンプライアンスに対する懸念だという。自組織が生成AIに関する現行および将来的な規制に準拠する体制が整っていると答えたのは、10人に1人(11%)にとどまり、保険各社では倫理的に導入された生成AIの事例に注目が集まっているとのことだ。

 たとえば、大規模言語モデル(LLM)では膨大な量のデータが要求され、既存システムでは対応できないためにエッジケースを適切に処理できない可能性があるという。保険業界ではバイアスを排除し、データ品質を確認した大規模データセットが著しく不足しており、まさに「データ枯渇」と言える状況だと同社は述べている。

 この問題が重要である理由として、同社は「生成AIを始めとするAIモデルの学習に使われるデータの量と質次第で、保険金の請求や保険契約を決定する際、モデルから得られる結果の正確性や公平性、公正性が左右される可能性があるから」だとしている。

 また、保険会社は受託者として、膨大な量の個人識別情報を保管している。データプライバシーに対する不安が高まるにつれて、合成データが解決策を提供できるかもしれないと考えられるようになっているとのことだ。これは、現実世界のデータを実際に模倣した人工データで、顧客のプライバシーを損なうことなく既存のデータセットを充実させるために用いられているという。

 調査では、保険業界の4分の1以上(27%)が合成データを使用していると回答しており、3分の1近く(30%)が「利用を積極的に検討」、22%が「検討する可能性がある」と回答している。

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