2024年12月12日、ブレインパッドは生成AI事業に関する説明会を開催した。
同社は、データ/AIを活用したソリューションを核とした企業であり、代表取締役社長CEO 関口朋宏氏は「企業内でデータ活用、AIの開発ができるように『内製化』を大きなテーマに掲げて取り組んできた」と述べると、コンサルティングやSIだけでなく、人材育成・教育サービス、SaaSを柱として支援を行っていると話す。
その中、2023年5月より「生成AIタスクフォース」を立ち上げており、生成AIにかかわる技術検証や市場調査、情報発信を行っている状況だ。「生成AIという技術を民主化しても、(日本企業の状況を加味すると)業務効率化などには結びつきにくい。だからこそ、『AIエージェントサービス』の提供を決断した」と関口氏は説明する。
一方、AIエージェントの普及には大きく2つのボトルネックがあるとして、「データの量と質の不足」「AIエージェントの品質維持・管理」を挙げた。これを解消するため、日本企業に特化したAIエージェントの開発・提供を進めていくが、「市場としてはコモディティ化が進み、市場競争は過熱するだろう」と関口氏。だからこそ、単にAIエージェントを構築するだけでなく、品質保証やアノテーションなどを担うAIエージェントサービスも包含して提供していくとする。
具体的には、意思決定を高度化するCo-pilotのようなAIアシスタントではなく、AIアシスタントとも協働できるような自立型のAIエージェントを提供していくとして、個人ではなく“組織”としての業務変革につなげるためのサービスを逐次投入していくという。同社 アナリティクスコンサルティングユニットマネージャー 辻陽行氏は、「品質責任を誰がとるのか、コンテキストをどのように統合していくのか。まずは、各業界に特化した『BrainPad アノテーションエージェント』を提供していく」と発表した。
説明会では、アパレル業界における商品マスタを例にとってデモンストレーションが行われた。たとえば、AIエージェントによるタグ付けを行った際、担当者がタグ付けに問題があるかないかを判断することで、タグの定義を自動で書き換えていくという。その結果、担当者の基準とAIエージェントの結果がどれだけ合致しているのかなど、評価も行えるとする。他にも、ユーザーレビューを分類して「配送状態」「品質が悪い」などのカテゴリデータを付与することで、分析しやすいように整備したり、対応した方がよいレビューに優先度をつけたりと、より効率的に作業フローを改善できるという。
「ドメイン知識をどれくらいAIが理解しているのか、どの程度の品質であれば利用できるのかなど、人間が管理可能な評価指標に落とし込むことにこだわっている。これまでのように正解ラベルを作成することなく、担当者がOK/NGを出すだけでAIエージェントが判断・改善するため、大きな業務負担が生まれない」(辻氏)
今回発表された「BrainPad アノテーションエージェント」は、下図のような形で業界ごとに適用が進んでいくとする。まずは、一部ユーザーに適用していく中でユースケースを見出しながら、共通課題などを解消するためのSaaS提供にもつなげていく狙いだ。将来的には、業務プロセスを遂行できるAIエージェントを逐次投入していきながらも、これまで培ってきた機械学習などの技術を組み合わせることで、より堅牢なアーキテクチャに基づいたAIシステムを実現していきたいという。
「アノテーションエージェントはAI普及に欠かせないものだ。実際、我々のデータサイエンティストの8割はデータ処理にあたっている。まさに、これまでの知見に基づいた我々らしいサービスと言えるだろう。今回の新サービスにより、積極的投資を行いながらAI関連事業を数十億円規模のビジネスに成長させていく」(関口氏)
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