ビーマップは、麒麟麦酒(以下、キリンビール)とエヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム、シスコシステムズ、Edgecore Networksの協力により、来年度以降に見込まれるWi-Fiにおける6GHz帯SPモード(Standard Power)の制度改正を見据え、技術検証としてキリンビール 仙台工場において、高出力アクセスポイント(以下、高出力AP)を用いた無線通信の実証実験を2026年3月30日から実施すると発表した。
同実験では、最大送信出力3.2W(現行法で認められた屋外における出力値25mWの約125倍に相当)の高出力APを使用し、工場環境における屋内・屋外それぞれの無線通信特性を検証。同実験の出力条件は現行法における通常運用では認められていないものとなるが、総務省より「実験試験局」の免許を取得し、正式に許可を得たうえで同実験を実施するという。
同実験は、以下2点を主な目的として実施するとのことだ。
- 通信品質・エリア差の定量評価:工場という実用性の高い環境において、通常出力と高出力(3.2W)でどのような差が生じるのかを検証する
- 将来運用に向けた特性の把握:将来的にAFCが制度化された場合に想定される最大4Wクラスの出力運用を見据え、高出力Wi-Fiの実環境における特性を明らかにする
実験の概要
同実験では、将来的なWi-Fi SPモードにかかわる制度改正およびAFC運用導入を見据え、実際の製造現場であるキリンビール 仙台工場において、以下3つの出力モードにおける通信特性を比較・検証。出力モードの違いが、通信エリアの広さ、品質、安定性にどのような影響を与えるかを明らかにするとしている。なお、測定にあたってはWi-Fi通信特性の検証ノウハウを持つエヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームの協力により実施する。
- 実施場所:キリンビール株式会社 仙台工場(屋内および屋外)
- 使用する最大送信出力(EIRP):3.2W
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比較検証するWi-Fi 6GHz帯の出力モード
- VLP(Very Low Power):屋外利用を前提とした超低出力モード
- LPI(Low Power Indoor):屋内利用を前提とした屋内出力モード
- SP(Standard Power):今回検証する高出力モード
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検証項目
- 同一環境下における各モードの通信エリア範囲(カバレッジ)
- 通信品質(スループット、遅延等)および接続安定性
実験協力企業と各社の役割
- エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム:実験試験局免許の申請に関する専門的アドバイス/実証実験における電波測定の協力
- シスコシステムズ:SPモード対応無線LANアクセスポイントの提供/検証環境構築に向けた技術支援
- Edgecoreネットワーク:SPモード子機として使用する無線LANアクセスポイントの提供
実験で使用する機器とその特徴
同実験では、高出力かつ過酷な環境下での運用に対応するため、以下のハイエンドアクセスポイント2機種を使用するという。
1.Cisco Wireless 9179F アクセスポイント(シスコシステムズ)
スタジアムやアリーナなどの超高密度環境(LPV:Large Public Venues)向けに設計された、Wi-Fi 7対応のフラッグシップモデル。特徴は以下のとおり。
- Wi-Fi 7 (IEEE 802.11be) 対応:最大データ転送レート24 Gbpsに達し、超低遅延と大容量通信を実現
- 屋内/屋外コンバーチブル設計:専用のEnvironment Packを装着することでIP65/IP67等級の防塵・防水性能を発揮し、本実験のような屋内・屋外双方での検証に適している
- ソフトウェア設定可能なアンテナ:ソフトウェア制御によりアンテナの指向性(狭角・広角など)を切り替え可能で、設置環境に応じた最適なエリア構築を検証
- AFC対応:GPS/GNSSレシーバーを内蔵しており、将来的なAFC運用(位置情報に基づく周波数管理)にも対応可能なハードウェア構成を有している
2.Edgecore Networks OAP101-6E(Edgecoreネットワーク)
屋外の過酷な環境に耐える高い耐久性と、6GHz帯を利用した高速通信機能を兼ね備えたWi-Fi 6E対応モデル。特徴は以下のとおり。
- 高耐久・耐環境設計(IP68):IP68等級に準拠した防水・防塵性能と、-40°C〜60°Cの動作温度範囲を持ち、工場の屋外プラントなど厳しい環境下での安定稼働を実証
- Wi-Fi 6E トライバンド対応:2.4GHz/5GHzに加え、混雑の少ない6GHz帯を利用することで、最大5.4Gbps(3バンド合計理論値)の高速通信を提供
- TIP OpenWiFi対応:Telecom Infra Project(TIP)の仕様に対応しており、ベンダーロックインを避けたオープンかつ柔軟なネットワーク構築の可能性を検証
今後は、同実験で得られるデータをもとに、以下の活動を推進するとのことだ。
- 制度検討・標準化への貢献:来年度以降に想定されるWi-Fi SPモードおよびAFC運用の本格導入に向け、制度改正や標準化議論に資する技術的エビデンス(実証データ)を提供し、日本の産業インフラを支える無線通信基盤の高度化に貢献
- 産業分野におけるユースケースの確立:工場・物流・エネルギー・防災など、広域かつ安定した通信が不可欠な分野に対し、高出力Wi-Fiの適用範囲を具体化。特に、広大な敷地や複雑な構造物による「通信エリアの分断」「設備コスト増大」といった課題に対し、高出力化がどのような解決策となり得るかを整理する
- 次世代無線ネットワークのモデル構築:製造設備の稼働監視、AGV(無人搬送車)やロボットの制御、非常時の情報共有など、具体的な業務プロセスへの適用を想定し、高出力Wi-Fiを活用した次世代無線ネットワークの設計指針および運用モデルの確立を目指す
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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