適用範囲が広がるRPA
「47%の業務は自動化される」とされたオックスフォード大マイケル・A・オズボーン准教授の論文から、まもなく4年――その間、多くの企業で急速にRPAの導入が進んではいるが、実際の置き換え率は遥かに及んでいない。実際、田中氏の調査では、当初RPAで置き換えられると期待された労働を50%とすると、その中で実際に置き換えができたものは予め決められた作業ルールに従う定型作業のみ。『Class1』と呼ばれるRPAでの置き換えは、定型業務の20%程度であり、全体の5~10%に留まっているという。
つまり、置き換えられるはずの定型業務の約80%に、定型と言いながらも人がちょっとだけ介在するなど、作業ルールの範囲に収まらない「例外作業」が数多く存在し、それがRPAによる真の働き方改革、デジタルレイバーの実現を阻害しているという。この「例外作業」をRPAと人工知能(AI)を組み合わせて置き換えようというのが『Class2』だ。
そうした昨今のRPAにおいて、KPMGコンサルティングは中立性を保ちながら、『Class1』のみならず『Class2』レベルの導入支援までを手がけてきた。そのKPMGが実施した調査によると、現段階では単純作業の業務に関するRPA導入ニーズが高いが、3年後にはより高度で複雑な業務でのニーズが増えることが予測されるという。
つまり、「Class1」として定型作業の自動化を目的に、情報取得や読み込み、入力、検証などの“作業”をメインとする、いわば「巨大マクロ」的な製品から、数年後には例外対応や非定型業務の自動化を目的とする「Class2」へと適用範囲が拡大するという。すでにディープラーニングや自然言語・画像・音声処理などを可能とするWatsonなどの「コグニティブAI」が登場しており、実用化によって企業にも導入され始めている。
田中氏は「あくまで個人的な予測」と前置きしながら、「『Class1』で活用され、その価値を認められた製品にもAI技術が導入され、また新しい価値を生み出すものとして生まれ変わる可能性がある。単に置き換わるというより、価値の拡大というべきだろう」と分析した。