複数のエンジンとUIを組み合わせる
人工知能(AI)の導入が現実的になってきている。メガ銀行が今後、AIの活用などにより3万人の人員を削減するというニュースが流れるなど、巷間語られる「AI脅威論」も現実味を帯びてきた。AIが全ての仕事を代替してくれるという「AI万能論」もある。しかし、現実の企業の現場にとって、この両方の議論はそれほど重要ではない。むしろ今ある業務課題の解決や、ビジネスにとってAIはどのように導入できるかを考え、現実的に取り組んでノウハウを蓄積していきたいと考えるだろう。
しかしAI活用については容易ではない。上司あるいは経営者から「AIを導入して事業を検討せよ」という指示を受けた担当者は、IBM WatsonやGoogle、Amazon、マイクロソフトなど各社が提供しているAIエンジンやサービスを思い浮かべるかもしれない。しかし悩ましいのは、どのビジネス領域にどのベンダーのプラットフォームが適切なのかがわかりにくいということだ。たとえばIBMのWatsonは自然言語処理が強みだが、使い方によっては他のAIも選択肢となる。またディープラーニングなどの場合、判断の根拠がブラックボックスとなるため、実用化で根拠が求められる業務には適さない。また自社のモデルやデータを、ベンダーのAIプラットフォームに預けるべきかどうかも検討課題となる。
「単一のAIに全てをまかせる」「とりあえず有名なAIを使う」「優れたアルゴリズムがあれば良い」──これらは陥りがちな誤解だとアクセンチュアの保科学世氏は言う。
そしてAI活用の要諦として、1)AIを活用する目的と領域を見極める、2)自社の強みを活かせる領域でクラウドサービスやAPIを活用し素早くサービスを立ち上げ進化させる、3)良質な学習データと継続的に進化する環境をつくる、という3点をあげる。
AIと人間の協調型が最も満足度が高い。
アクセンチュアは、コールセンター業務を対象に、人間とAI型のバーチャル・エージェント(VA)の組み合わせによる顧客満足度を調査した。それによると、人間とVAにお互いの得意領域を担当させ、協調させた場合が最も顧客満足度が高かったという。
アクセンチュアは現時点では、AIが実施すべきところ、人間が実施すべきところを見極め、どのように協調させるかを考え、以下のように定義している。